人魚の海域(6)
「じゃあ、今度こそ出発だなぁ。問題はどうやってあっちまで行くかだ」
珍しく吉田のおじいちゃんが真剣な顔をしているね。
裸だけど……
「晴太郎……服着たら?」
おぉ!
お父様が珍しくまともな事を言っているね。
さすがに実のおじい様が裸じゃ言いたくもなるか。
「ええ? だってだってぇ……一回無くなったモノがあるんだからぁ! 分かるだろぉ?」
「「「……」」」
あぁ……
ベリアル以外の天族が皆黙っちゃったよ……
複雑だよね。
初代の神様であり、おじい様でもある吉田のおじいちゃんが裸踊りをする理由がこれなんだから……
切り落とされちゃったモノがまた生えているんだから嬉しくて仕方ないんだよね。
……おもちゃを買ってもらった子供が見せびらかしたいみたいな感じかな?
「吉田のおじいちゃん……こんな事もあろうかと、ふんどしを持ってきたよ! 着けて!」
「おぉ! オレのふんどしだ! ぺるぺるは気がきくなぁ。あははは!」
「絶対こうなると思っていたからね。それに間違えて魚に食いつかれて、また取れちゃいそうで心配なの」
おじい様の悲しい顔を見たくないの。
わたしの心の声が聞こえているかな?
「ん? あははは! そうか、そうか。ぺるぺるは優しいなぁ。よし! できたぞ。じゃあ行くか!」
「うん! でも……どうやって行く? 海の中は人魚に有利だよね? 空間移動して島に行っても、いろんな罠がありそうだよ?」
「ペルセポネの言う通りだ。海は危険だ。それに、人魚が移動できる水路が島中に掘られているようだ。人魚は陸には上がれないが水路から攻撃してくるだろう」
ハデス……
どんな鍛錬をしたら、か弱い人魚がそんな性格になっちゃったの?
「じゃあ、どうしたらいいかな? 陸も海もダメなら……空? あれ? わたし達ってあの島に何をしに行くんだっけ?」
上陸しないといけないんだっけ?
「それは、オレがあいつに貸してる金を……あれ? あいつだけこっちに連れてくればいいんじゃないか? 皆で危険な島にわざわざ行く事無いよな? こっちの島に連れてくれば魔法石は使えないんだろ?」
そうだよね。
海賊の魚人族の言う通りだよ。
それに、もしわたしが怪我でもさせられたら、ハデスが人魚を絶滅させる可能性が高い。
いや、絶対そうなるよ。
「ええぇ? そんなのつまんなぁい! じいちゃん行きたいよぉ。遊びたいよぉ」
吉田のおじいちゃん……
刺激が欲しいのかな?
「おじ……吉田のおじいちゃん。(いろんな意味で)危なそうだからあの人魚だけ連れてこよう? ね?」
「ええぇ? いやだ、いやだよぉ! じいちゃん行きたいよぉ!」
あぁ……
おじいちゃん、また始まったよ。
砂浜に寝っ転がって手足をバタバタさせている。
ふんどしを着けていて良かった……
人魚の為にも絶対にあの島には行けないんだよ。
困ったなぁ。