『公女を処刑しないで』なんて言えないよ
「でも……公爵令嬢として……」
スウィートちゃんは立派な公爵令嬢の姿を『意地悪顔』って勘違いしているのかな?
「スウィートちゃんは、本当はどうしたいの?」
「え? それは……もっと薄化粧の方が……いいけど……」
「じゃあ、そうしようよ。誰もバカになんてしないよ? むしろ皆、見とれちゃうくらいかわいいよ?」
「え? わたしに……見とれる?」
「うん! わたしは今のスウィートちゃんの方が好きだよ? 素の感じがして親しみやすいよ?」
「素の感じ? でも、それじゃあ公爵令嬢としての……」
「大丈夫だよ。『公爵令嬢らしさ』なんて誰かが決めた事でしょ? スウィートちゃん自身が公爵令嬢なんだから、素のスウィートちゃん自体が公爵令嬢でしょ?」
「え?」
「肩の力を抜いていいんじゃないかな? そうじゃないと理想の公爵令嬢に押し潰されちゃうよ?」
「押し潰される?」
「スウィートちゃんがスウィートちゃんでいられればそれがスウィートちゃんなんだよ!」
「……? よく分からないわ?」
「えへへ。それでいいんだよ。そうじゃなきゃつまらないでしょ? 全部分からないから楽しいんだよ! 知らない事があるってワクワクするでしょ?」
「……? やっぱりよく分からないわ? でも……クラスの皆がわたしを良く思っていない事は分かるわ。扇子で殴られて痛かったわよね。そんな事、考えた事も無くて。ペリドットに言われて初めて気づいたの。情けないわ。それに……毒まで……どうかしていたわ」
「スウィートちゃん……」
「わたし……きちんと罪を償うわ。そうしたら……ペリドット……あの……友達になってくれる?」
「え?」
「やっぱり、嫌よね?」
「嫌って言うか……スウィートちゃんはもう友達だから……もう一度友達になるの?」
「え? もう友達?」
「うん! あれ? 違ったのかな? あれ? わたし一人で友達だと思っていたのかな?」
「……ペリドット……ありがとう。友達がいるってなんだか……上手く言えないけど……」
「うん。分かるよ。ちょっとくすぐったくて、嬉しくて楽しくて……そんな感じ?」
「ペリドットは……王妹殿下なの?」
「あぁ……そうだね」
「申し訳ございませんでした」
「え? あ……うん。えっと……うん。スウィートちゃんはきちんと謝れて偉いね。突然変わって驚いちゃったよ」
「最期だから……最期くらいは自分らしくしたくて」
「……最期?」
「クラスメイトを毒殺しようとしたのよ? 王妹殿下に罪を被せようともしたわ……処刑……されるはずよ」
「スウィートちゃん……悪い事をしたって分かって反省できたなら……きっと……だから……」
「ペリドット……」
お兄様が、辛そうな顔をしているね。
スウィートちゃんは処刑されるの?
嫌だよ。
でも……
それをわたしが言うのはダメだよね。
わたしが処刑しないでなんて言ったらお兄様を苦しませちゃうよ。
お兄様は、ただでさえ大変なのに、わたしがわがままを言ったらダメだよ。
「……」
「ペリドット……話して?」
「だって……お兄様に迷惑かけちゃうから……お兄様は大変なのに……」
わたしのわがままで振り回したくないよ。