公爵の誤解は解けたけど公女は相変わらずだね
「この者を捕らえよ!」
お兄様がかなり怒っているね。
暗殺者か……
最後までダメダメだったね。
「直ちにジギタリス公爵家を包囲しろ! ネズミ一匹逃すな!」
やっぱりお兄様は王様なんだね。
凛々しくて素敵だよ。
あぁ……
スウィートちゃんがメロメロになっているよ。
あ……
少し離れた所から、マクスの妹が『リコリス王ラブ』って書いてあるうちわを掲げているね。
いつの間に来ていたんだろう。
王室騎士団がジギタリス公爵家に走っていったね。
近いのかな?
「待て待て疲れちまうぞ? 白いヒヨコちゃんの姉ちゃんの方はその公爵家の場所が分かるか?」
吉田のおじいちゃんがお母様に話しかけているね。
お母様が頷いた?
どうしてお母様はその公爵家の場所を知っているのかな?
「よし、じゃあこの騎士団を空間移動してやってくれ」
またお母様が頷いたね。
「皆、目を閉じろ!」
吉田のおじいちゃんが叫んだけど……
暗殺者だけは目を閉じなかったみたいだね。
すごく痛がっているよ。
「お兄様……ジギタリス公爵はすぐに捕らえるのにスウィートちゃんのおじいさんは捕らえなかったよね? どうしてなの?」
「そうだね……闇の力の事もあったけど、公爵が悪意だけで動いているとは思えない点もあってね。信頼している者が公爵を悪く言わなかったし……だからきちんとした証拠が欲しかったんだ。……公爵、すまない。わたしもジギタリス公爵や他の貴族達からの言葉を信じてしまって……」
「陛下……わたしが早くに話しておけば良かったのです。申し訳ございませんでした。陛下の手を煩わせないようにと……」
「公爵……これからもわたしに王としての在り方を教え……」
「いえ。わたしは引き継ぎが終わり次第息子に爵位を譲ります」
「公爵? 今回の出来事のせいか? すまない。わたしが疑ったせいで……」
「違います……そうではなく……毒を飲んだと勘違いした時に思い浮かんだのは家族の顔でした。今まで……やり方は間違えたかもしれませんがわたしはリコリスの為だけに生きてきました。これからは家族の良き年配者として余生を送りたいのです」
「公爵……そうか。もし……嫌でなければ……これからは、時々お茶でもしないか? 公爵と王としてではなく、血の繋がった者として……」
「……! はい。是非! おじい様やお父上の若い頃のお話をするのが楽しみですな」
「わたしは、リコリスの『家族』を何一つ知らないのだ……公爵、楽しみにしているぞ?」
良かった。
誤解が解けたみたいだね。
「では! わたしも共にお茶会に参加しますわ!」
おぉ……
スウィートちゃん……
公爵に対しては誤解していたけど、スウィートちゃんはただのわがまま令嬢なんだよね。
実際毒をティーポットに入れてもいるし……
その件に関しては罪を問われるよね?
「スウィートちゃん……もう終わりにしよう。我が公爵家は婚約者候補から外れよう」
「え? おじい様!? どうしてなの!? わたしは王妃になりたいの! 陛下の隣に立ちたいのよ!」
「スウィートちゃん……陛下にはもうすでにお心に決めた方がおられるのだ。スウィートちゃんには違う幸せが……」
「嫌よ! 嫌なの! 陛下じゃなきゃ嫌なの!」
公爵への誤解は解けたけど……スウィートちゃんは変わらないね。