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信じたい気持ち

「ぺるみ……大丈夫か? 公爵は狡猾なんだろ? そのまま毒を盛った犯人にされたらどうするんだよ」


 ベリアルが心配してくれているね。

 

「今回ばかりはもう見逃せないよ。わたしだけを狙ったんじゃないの。クラスの皆の命まで……赦せないよ。もしこれが未遂で終わったとしてもまた次々に仕掛けてくるはずだよ? 早めに手を打たないと被害者が出てからじゃ遅いんだよ」 


「そうか」


「でも……最後まで信じたい気持ちもあるの。もしかしたら公爵に逆らってティーポットに毒を入れないかもしれないから。そうあって欲しいの。クラスメイトだから。信じたいの」


「……そうか」


「ペリドット様……たぶん……いや、絶対公女は毒を入れますよ。ずっと近くで見てきたんです。どんな奴かは分かっています。オレ達がもがき苦しむ姿を見て笑うはずですよ。あの女はそういう奴なんです」


 前の席のジャックが悔しそうに話し始めたね。


「赦せない……絶対に赦さない。(信じていたのに……)」


 伯爵令嬢も恐怖に身体を震わせながら怒っているね。

 

「とりあえず、公女には何も気づいていない振りをしよう? もしかしたら毒を入れないかもしれないから……」


「そうですね。わたくしも……さすがに公女がそこまでするとは思えませんし……とりあえず、倒れた振りをして様子を見てみましょう?」


 先生には、公女を信じたい気持ちがまだあるんだね。

 皆でアカデミーにゆっくり歩き始めると、クラスメイトの女の子達が泣き始める。


「公女は……結局変わらなかったね」

「うん……わがままだったけど……まさかこんな事まで……」

「赦せないわ。もし、ティーポットに毒が入っていたら……わたし……公女を殴るかもしれないわ。処罰なんて怖くないもの。絶対に赦せない」


 ……わたしがアカデミーに来た事で、クラスメイト達が公女を更に嫌いになっちゃったのかな?

 それもあるだろうけど……もう我慢の限界が来ていたのかもしれないね。

 いくら厳しい身分制度の中で生きているとしても、我慢の限界があるんだよ。

 理不尽に虐げられる事には耐えられないよね。


 あぁ……

 ついにアカデミーの門に到着したね。


「……一旦クラスルームに戻りましょう。大丈夫ですよ。怖い事はありません。先生は信じたいの。公女の中にほんの少しだけでも優しさが残っている事を……」


 先生……

 そうだね。

 まだ十五歳位の女の子なんだよ。

 毒なんて、怖くてクラスメイトに飲ませる事はできないはずだよ。

 

「わたしも共にクラスルームに行きましょう」


 学長がベリアルを抱っこしながら真剣な顔をしているね。


「学長……わたしは学長の身体が心配だよ」


 高齢だから心労で倒れちゃいそうで怖いよ。


「近くでしっかりと見届けたいのです。もう二度と大切な学生を失わない為にも……」


 そうだね。

 離れていたらもっと気になっちゃうよね。

 

「じゃあ、クラスルームに入るよ」


 公女は、いるのかな?

 あぁ……

 どうか毒を用意していませんように。

 いきなりティーポットを渡してきたらどうしよう。

 

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