ゴンザレスとの内緒話～前編～
（愚かにも程があります。ぺるみ様を捕らえさせるとは……今すぐアカデミーに戻り、愚か者が毒を入れる瞬間を押さえましょう！）
うーん。
ゴンザレスはそう言うけど……
ピクニックの為に第三地区の皆が用意してくれた食事に毒を入れるっていう事？
無理じゃないかな？
おばあちゃん達は、できたてを空間移動で運んでくれるはずだよ？
毒を入れる時間は無いはずだよ？
（言われてみれば確かにそうですね。愚か者はどのように毒を入れるつもりでしょうか？）
とりあえず、歩きながら皆に話してみようかな？
（なぜ知っているのかと訊かれたらどのように答えるのですか？）
あぁ……
それは大丈夫だよ？
神様からお告げがあったって言うから。
（なるほど。名案ですね。あの……）
ん？
何かな？
（ぺるみ様は毒殺犯にされそうだというのに怒る……と言いますか……そういう感情にはならないのですか？ 遥か昔のぺるみ様の魂は常に怒りや憎しみでドロドロとしていましたが……）
え？
そうなんだね。
うーん。
別に……腹も立たないよ。
第三地区の皆が作ってくれた食事に毒を入れて食べられなくしたら怒るだろうけど、そうじゃないみたいだし。
それに、前もって知る事ができたから毒を口にはしないしね。
でも……もし公女が毒だと知った上でクラスメイトの食事に毒を入れたとしたらそれはもう庇いきれないよ。
さすがに公女自ら毒を入れるとは思えないけど……
（あの人間の女ですか……あの女ならやりかねませんが）
ゴンザレスは公女の心の声も聞こえるんだよね？
実際は心が綺麗とか……ないのかな？
（そうですね……それは無いですよ？ ぺるみ様がありがたい忠告をしてくださったというのに全く伝わっていませんし。今でもリコリス王妃の座を狙っていると勘違いしているくらいです。公女はもうこのまま闇の魔力を使った犯人として処刑された方が良いのでは？）
ゴンザレスはその犯人がハデスっていう事は知っているんだよね？
（はい。わたしが心を読めないのは初代の神だけですので）
ハデスの……その時の事って、覚えている？
(……それを訊いてしまうのですね。あまりに多く暗殺し過ぎて覚えていないようですよ？ 相手は人間ですし、まぁ魔族だったハデス様からしてみれば人間の一人や二人、十人や二十人、百人や……)
なるほど、そのレベルの数の暗殺をしているんだね。
（まぁハーピーの息子も喜んでいますし……）
……？
どうしてハーピーちゃんが喜ぶのかな？
（え？ それは生きた人間を……）
うわあぁ！
うん！
分かった！
もういいよ！
（そうですか？）
……なるほどね。
ハデスがハーピーちゃんを鍛錬しているって聞いてはいたけど、人間の襲い方の鍛錬だったのか……
（ハデス様はハーピーの息子をいずれヴォジャノーイ王の側近にと考えているようですね）
ヴォジャノーイ王の側近？
（はい。ハデス様はヴォジャノーイ王が次期魔王になれない事を分かっているようで……）
え？
次期魔王？
（はい。魔王様は次期魔王にはイフリート王をとお考えのようです。ヴォジャノーイ王は優し過ぎて魔王の座を負担に思うだろうと。実際、ヴォジャノーイ王もそう考えていますし）
わたしの知らない事ばかりだね。
なるほど。
でも、なんでハーピーちゃんをヴォジャノーイ王の側近にしようとしているの？
（それは、いずれ、あの気の強いハーピーの息子が魔王になりたいと暴れだすのをヴォジャノーイ王にとめさせる為です）
ハーピーちゃんをとめる為？
