皆の心が温かくて嬉しいよ
「あの……皆さん、聞いてください!」
ん?
前の席のジャック?
どうしたのかな?
「この世界を浄化して命を落とされた聖女様のお気持ちを……聞いて欲しいんです!」
ジャック?
わたしの気持ちって?
「聖女様は、この世界の皆が幸せに暮らせるように命がけで浄化をしたんです。それなのに……恥ずかしいよ。魔素が祓われてから、人は争ったり騙し合ったり……こんなの聖女様が望んだ世界じゃないよ!」
……!
まさか、この為に属性検査に付いてきたの?
「ジャック……」
「オレは……無力で……ただの男爵家で……でも、聖女様に恥ずかしくない生き方をしたいです! 皆さんはどうですか? 今、この場に聖女様がいたとしたら……恥ずかしくない生き方をしていますか?」
あぁ……
皆黙っちゃったね。
「……わたしは、聖女様は物語の中だけの人だと思っていて……」
先生?
すごく悲しそうな顔をしているね。
「どれ程苦しかったか……どれ程大変だったか……それなのに……わたくしはこんな生き方しかできなくて……恥ずかしい」
……恥ずかしい?
確かに先生はボーナスで全部の指に指輪を買っていたけど、すごく素敵な先生だよ?
恥ずかしくなんてないよ。
「わたしも……いつも公女様の言いなりになって……恥ずかしいです。聖女様が命がけで守ってくださった世界で……こんな生き方をしてはいけません」
公女の取り巻きだった女の子だね。
仕方ないよ。
この世界には厳しい身分制度があるんだから。
「……きっと、聖女様も今の言葉に胸が熱くなっているはずです。皆の心は必ずや聖女様に届いている事でしょう」
司教……
ありがとう。
わたしに優しく微笑みかけてくれているね。
「わたし達神殿は聖女様の想いと共に巡礼に参ります。聖女様の望まれた美しく清らかな世界に近づけるように励みます」
司教は、やり方は間違えたけど立派だったよ?
だからこそ、神殿が存続できるんだから。
あぁ……
確かに問題だらけだけど……
ルゥの身体には申し訳なかったけど……
わたしは浄化をして良かったんだ。
ルゥの前の聖女の想いも果たせたんだね。
涙が溢れてきちゃったよ。
皆の心が温かくて心地いい。
「……ありがとう。わたし……嬉しいよ……」
ダメだ。
涙が止まらないよ。
事情を知っている神官とクラスメイト達も一緒に泣いてくれているね。
「ぺるみ……良かったな。皆ちゃんと分かってたんだ。ぺるみがどれだけ苦しかったか、辛かったか。ぺるみだけが犠牲になって、生きている人間がクズばっかりだったらオレは赦せなかったぞ? でも違ったんだな」
ベリアル……
「……うん。うん。……っ」
「好きなだけ泣けばいいさ。オレが特別にトントンしてやるからな?」
「……! トントン……?」
ベリアルのパンみたいなかわいい翼でトントンを!?
「特別だぞ? ぺるみが頑張ったご褒美だ」
トントン!?
かわいいパンみたいな翼でやるあのトントン!?
ぐふふ。
ぐふふふ。
やったね。
頑張ってきて良かったよ。
最高のご褒美だよ!
さぁ!
今すぐトントンを……
「今回からは、まともな属性検査ができるらしいな! さっさと検査を始めろ!」
「順番に並んでいただきませんと……」
ん?
野太い声?
若い神官に怒鳴っているみたいだね。