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今度こそ幸せになろうね

「よし、じゃあ、戻るぞ。じいちゃん、絶対ゴンザレスを守ってくれよ? オレも魔王にお願いしたけど心配なんだ。ゴンザレスはもう家族なんだ」


 ベリアル……

 そうだね。


「ゴンザレスもベリアルの事が好きって言っていたよ?」


「本当か? ぺるみはいつの間にかゴンザレスと話してたのか? オレはさっき初めて話せるのを知ったんだ」


「ふふ。ゴンザレスはベリアルの側にいる時は何か食べたりしていて話す暇が無かったんじゃないかな? 名前をつけてもらえて嬉しかったらしいよ?」


「うぅ……ゴンザレスゥ……」  


 あぁ……

 ベリアルが泣いちゃいそうだよ。


「ベリアル、大丈夫だからなぁ。じいちゃんとばあちゃんが頼んでやるから。ほれ、ぺるみと行ってこい。帰ってくる頃にはゴンザレスが待ってるぞ?」


 吉田のおじいちゃんが優しく微笑んでいるね。


「うん……オレ、頑張ってくるから……ぺるみ、今日は急いで帰ってくるからな! 行くぞ!」


「そうだね。持つ物も持ったし、行こう!」



「ほら、検査会場に着いたぞ。誰もいない木の陰だ」


「あぁ……ありがとう。まだ、目が開けられないの」


「ん? そうか。まだ光に慣れないか」


「……ねぇ、ベリアル?」


「ん? なんだ?」


「これからは、絶対に……寂しい思いはさせないからね」


「ん? 何がだ?」


「うん。なんとなく……言いたかっただけ」


「ん? 変な奴だな。ほら、もう眩しくないぞって……何してるんだ?」


 ふふふ。

 しっかりがっちり掴まえさせてもらったよ。


「えへへ。掴まえた。ぐふふ。ぐふふふ」


「うわあぁ! やめろぉぉ!」


「やめないよ! ほら、もうすぐ属性検査が始まるんだよ? 主役が着飾らないでどうするの? ぐふふ」


「うわあぁん! ばあちゃん! ぺるみが変態だよぉ!」


「ぐふふ。おばあちゃんは今ここにはいないんだよ。ほら、できた!」


 ふふふ。

 かわいいよ。

 超絶かわいいよ。

 この前のわたしの誕生日の宴の時に着たピンクのドレスとミニハット。

 くぅぅ!

 嫌そうな顔がまたかわいいよ!

 堪らないね。

 それから……


「ほら、このステッキを持って?」


「ステッキ? なんだこれ?」


「魔法使いといえばステッキでしょ?」


「は? そうなのか?」


「そうなんだよ! 魔法の杖みたいなものだよ。ベリアルはわたしが合図したらこのステッキを空に向けてね?」


「ふぅん。良く分からないけどやってみる」


「うん。途中で雪が降ったり雷が鳴ったりするけど上位精霊の皆が痛くないようにしてくれるからね?」


「そうか。分かった」


「ねぇ、ベリアル……あのさ……」


「ん? なんだよ?」


「……すごくすごーく昔の事って覚えているのかな?」


「ん? すごく昔? どれくらいだ?」


「一番古い記憶だよ?」


「うーん。なんだろうな? うーん。思い出すのはハデスの鍛錬ばっかりだな……」


「あぁ……分かるよ。わたしもあの鍛錬は永遠に忘れないよ」


「「はぁ……」」


「あ、そうだ。誰かが小さい声で何か言うのを思い出す時があるぞ? 夢なのかな? 分からないや」


「夢? どんな?」


「うーん。真っ暗で……誰かが優しく言うんだ。『今度こそ幸せになれ』って『すまなかった』って。その声が泣きそうで寂しそうで……でもオレには心配してくれる家族なんていなかったからな。きっと夢だな」


「ベリアル……今は……家族がたくさんいるでしょ?」


「えへへ。うん! 第三地区の皆も魔王もヨータも皆家族だぞ! だからもう寂しくないんだ!」


「……そうだね。わたしも……ベリアルの家族にしてくれる?」


「ん? もう家族だろ?」


「え?」


「一緒に暮らしてるんだから家族だろ?」


「……! うん。そうだね。家族……だね」


「変な奴だな。疲れてるのか?」


「わたし……幸せだよ?」


「ん? そうか。どうしたんだ? 急に?」


「うん。言いたかっただけ。ベリアルに伝えたかったの。『ありがとう。また会えて嬉しいよ』って」


「ん? ……? 良く分かんないけど、オレもお前が笑ってると嬉しいぞ?」


「ふふ。わたしも、ベリアルが笑っていると嬉しいよ」


 不思議だね。

 元々ひとつの魂だったのか。

 またこうして一緒にいるなんて……

 今度こそ幸せになろうね。

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