表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

329/1484

騙し騙される不毛の時間(9)

 多分だけど、吉田のおじいちゃんの息子さんの魂がペルセポネの身体に馴染む薬とか……強過ぎる魂を弱める薬とか、そんな感じの物を飲ませようとしたらファルズフが暴走したんじゃないかな?


(……聖女様は初代の神を信頼しておられるのですね)


 うん。

 ちょっと手はかかるけどすごく頼りになる立派な人だよ?


(……心が盗み聞きされても、気味が悪いと思わないのですか?)


 え?

 覗かれて嫌な事なんて考えていないし、何の問題もないよ?

 ただ、心が聞こえてくるのは辛いだろうとは思うよ?


(……聖女様は、あの息子の邪悪な魂とはまるで別人のようですね)


 そうなの?

 そんなに悪い心の持ち主だったの?


(この世の全てを恨み、妬み、常に殺戮で頭がいっぱいで……)


 ……その魂がわたしなんだね。

 だとしたら、そんなわたしが変わったのは今まで出会ったたくさんの大切な人達のおかげだと思うよ?

 もちろん今でも悪い心はあるけど、常に恨んだり殺戮で頭がいっぱいなんていう事は無いからね。


(長い年月をかけて……あの邪悪な者の魂は救われたのですね)


 え?

 そうか……

 吉田のおじいちゃんが、そうなるようにわたしを導いてくれていたんだね。

 まだわたしの魂が息子さんの体内にいた時もペルセポネの時も月海るみの時もルゥの時もずっと……

 吉田のおじいちゃんは息子さんの魂が優しいだけじゃない事を分かっていたんだ。

 心が聞こえるから、邪悪な心を善良な心が抑え込んでいる事も知っていたんだ。

 それで、善良な心を解放して天界でべリアルに入れ込んで、邪悪な心のわたしを手元に置いて、今度こそ幸せになれそうなペルセポネに入れたんだ。


(確かにそのような事を言っていたような……)


 ……吉田のおじいちゃんは、今のわたしの姿を見て安心してくれているかな?

 わたしは、すごく幸せに暮らしているの。


(そうですね。あの頃の心の闇を知るオレから見れば、聖女様は全くの別人のようです。穏やかで、毎日楽しそうで……もちろん、時々悪しき心が見え隠れしますがそのくらいならかわいいものです)


 そっか。

 えへへ。

 良かった。

 おじいちゃんも同じような事を言っていたね。

 これで、おじいちゃんの心の苦しみが無くなればいいんだけど。

 わたしに全てを話してくれていたのに、わたしの心が弱くてまた迷惑をかけていたんだね。

 でも、もう平気だよ。

 今のわたしの心は強くなったんだから。

 もう、あの時みたいに……ハデスを巻き込んだ時みたいに、自殺なんて絶対にしないから。

 だから……

 おじいちゃん……

 おじいちゃんが何千年も自分を責め続けているって考えると心が痛いよ。

 もうわたしは幸せだから……

 大切な人達に囲まれてすごく幸せに暮らしているから。

 だからもう、わたしの事で傷つかないで欲しいよ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ