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騙し騙される不毛の時間(5)

 ……困ったね。

 ドラゴン王はそういうのが一番嫌いなんだよね。

 心が聞こえてもこの世界の決まりには疎いのかな?

 それとも、すごく長生きだからそういう事に興味がないとか?

 色々うるさく聞こえ過ぎるから普段は聞こえてこないようにしているとかかな?

 

(ドラゴン王が!? あぁ……どうしたら……)


 ちゃんと謝るんだよ。

 心から謝れば……まぁ赦してはもらえないだろうけど……  

 少しでも楽な最期を迎えたいでしょ?


(……楽に? ゴクリ……)


 それにしても、ずいぶん第三地区の事に詳しいね。

 まるで、近くで見ていたみたいに。

 どうしてなの?


(罪を軽くするように聖女様から頼んでいただけるのでしたら……お話しします)


 ……なかなかの、ちゃっかりさんだね。

 頼むだけなら頼んであげるよ?


(……我らは、かなり遠くの音が聞こえるのです)


 ずいぶん単純な理由だね。


(聖女様の思う以上に遠くまで聞こえます)


 ……?

 まさか、心が聞こえているっていう事?


(我らは、遥か昔から生き続けています。つまり、神が創り出したオリジナルに近い存在なのです。他種族と交わらず……純血種族と言えば分かりますか?)


 つまり、オリジナルに近い子孫っていう事だね。


(はい。あの……)


 ちょっと待って、そんなに遠くまで心の声が聞こえているのなら今、仲間に攻撃をやめろって伝えられないの?


(え?)


 まだ攻撃をしていないなら罰は受けないでしょ?


(確かに。少々お待ちください。おい! 皆聞こえるか!? 攻撃をやめろ!)


 心の声が聞こえている事は本当みたいだね。


(……はぁ!? もうやられた後!? ……こっちも大変なんだ! それが……)


 もう、やられたの?

 あのさ、心の声が聞こえる事は絶対に話したらダメだって伝えて?

 グリフォン族が赦しても吉田のおじいちゃんが赦さないよ。

 確実に一族根絶やしだね。


(あぁ! 確かに! 皆、絶対に心の声が聞こえる事は話すな! 聖女様が必ず助けてくださるからな)


 ……いや、そうは言っていないけど。


(え?)


 一度だけ助けるようにお願いしてあげるって言っただけだよ?


(そんな……)


 ねぇ……誰かの心の声が聞こえるってすごく嫌じゃない?


(……! 聖女様……はい。初めの頃は相手の心が分かる事に優越感さえ覚えていました。ですが、心の声が聞こえている事を知られると気味悪がられて。それからは、この力の事は一族だけの秘密にするようになりました)


 なるほどね。

 吉田のおじいちゃんには絶対に皆の力は、ばれていないんだね?


(はい。知られているのならもう生きてはいないでしょう。我らは仲間に心の声を聞かれないように常に心の底と違う事を考えていますから)


 それも大変そうだね。


(わたしは仲間の元に向かいます)


 あぁ……

 その前にお父さんの所に行って『罪を償いたい』って言うんだよ?

 決まりを知らずに攻め込んでしまったから魔王城でお詫びとして下働きをさせて欲しいってね。

 もう、グリフォン族の傘下には戻れないでしょ?

 グリフォン族はあなたの種族がいなくなっても王を名乗れるだけの種族を傘下に入れていたよね?


(魔王は赦してはくれないはずです)


 そうだね。

 でも生き残る方法はそれしかないよ?

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