騙し騙される不毛の時間(3)
(あの時、聖女様気づいた。ファルズフ一人じゃここまでできなかったって。そんな事できるの初代の神だけ。初代の神、全部話した。でも、聖女様、耐えられなかった)
え?
それってどういう事?
(初代の神、慌てて、記憶操作した)
……吉田のおじいちゃんはどうしてそんな事を?
(初代の神、ベリアルの持つ優しい心の息子しか知らなかった。聖女様の持つ心の怖さ、ペルセポネに入れてから気づいた? それよく分からない)
……吉田のおじいちゃんが大切なのはベリアルだけで、わたしは邪魔だったっていう事?
(実際、ペルセポネ、天界で殺された。ルミ、グンマで殺された。ルゥ、幸せの島で死んだ。皆死んだ。次はぺるみの番)
シェイド?
何を言っているの?
まさか……吉田のおじいちゃんがそんな事をするはずがないよ。
(初代の神、オレの心聞こえない。オレいつも気をつけてる。今、初代の神、ここにいない。この話聞いてない。初代の神、オレ聞こえている事知らない)
……?
どういう事?
(全員、記憶操作できてる思ってる)
……どうしてわたしに教えてくれたの?
(初代の神、気をつけろ。危険。簡単に記憶変えられる。聖女様の存在消す事簡単)
そんな……
(初代の神、息子美化してる。聖女様の心、邪魔)
シェイド……
(忘れるな。誰にも言うな。二人だけ秘密。この事知られたら二人共消される。心閉ざしたまま違う事考えろ。遥か昔も、やってた。聖女様ならできる)
……信じたいよ。
吉田のおじいちゃんの事を。
もちろんシェイドが嘘を言っているなんて思わないよ?
でも、ずっと近くで見守ってくれていた吉田のおじいちゃんをそんな風には思いたくないんだよ。
(聖女様……朝起きて皆が聖女様忘れてたら……どうする?)
え?
(ひとりぼっち……皆、聖女様知らないって言う。どうする?)
シェイド?
(初代の神、それできる。聖女様の大切な存在の記憶から聖女様消す事、簡単)
シェイド……
(一緒行こう。オレずっと一緒いる。記憶操作されない。オレだけずっと聖女様忘れない。一緒行こう)
……はぁ。
……あのさ。
もういいかな?
その話、つまらないんだけど。
(聖女様? どうした?)
まずさ、シェイドはそんなにおしゃべりじゃないんだよね。
真似しているつもりみたいだけど、全然違うよ。
あと、わたしを聖女様なんて呼ばないんだよ?
それから、吉田のおじいちゃんは……
まぁ、それはいいとして……
あなたはシェイドじゃないんだよ。
愚かだね。
どうして吉田のおじいちゃんがあなたをハリセンボンにしたか知りたがっていたね。
教えてあげるよ。
(聖女様……何を……オレはシェイド……)
確かにシェイドに似た闇っぽい力を感じるけど違うね。
シェイドはもっと優しい闇の力だから。
それに、妙な事をする時にはもっと気をつけないと。
(え?)
シェイドは今、リコリス城の検査会場にいるんだよ?
ほら、気配を感じるでしょう?
まさか、そんな事にも気づけないの?
(……いつから偽物、分かってた?)
うーん。
話し方も全然違うし。
最初からバレバレだよね。