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夫が仕事もしないで暗殺や恐喝まがいの事をしていると気づいて虚しくなる

「えっと……婚約者は……王族で……だから普段は……」


 あれ?

 ハデスって冥王だけど仕事はケルベロスが全部やっているし……

 何をしているんだろう?

 うーん。

 偉そうにするのが仕事?

 いつも、わたしを大切にしてくれるよね?

 ん?

 これは仕事じゃないかな?

 

「ペリドット様? まさか婚約者様は言えないような仕事をしているのですか?」


 うぅっ!

 公女の取り巻きの言う通りだよ。

 というよりは仕事をしていないんだよ!


「あの、揉め事の解決……かな? これ以上は王族内の秘密というか……」


「なるほど、確かに! 国家機密なのですね?」


 国家機密!?

 確かに元聖女の夫が仕事もせずに暗殺とか恐喝まがいの事をしているなんて、秘密にしないとだよね。


「あは……あははは……そうなんだよ……」


 上手くごまかせたかな?

 ……!

 ベリアルが悲しいつぶらな瞳でわたしを見つめている!?

 ベリアルはハデスの恐ろしさを側付きとして見てきたからね。

 同情してくれているのかな?

 いや、違うね。

『嘘つきめ。ハデスは仕事をケルベロスに押し付けて毎日フラフラしてるだけだろ』っていう顔だよ。

 

「あの……あの……デートとかもするのですか?」 


「え? デート?」


 うーん。

 いつも誰かしら一緒にいるからね。


「やはりお買い物とか……手を繋いで……ですか?」


 おぉ……

 クラスメイトの女の子達が乙女の瞳で見つめてくるね。

 あれ?

 でも、聖女が魔族と暮らしているのは絵本を配ったから皆が知っているんだよね?

 それに、聖女が魔族の前ヴォジャノーイ王と結婚した事も知っているはず。

 もしかしたら魔族と結婚した事を知らない人間もいるのかな?

 でもルゥが亡くなった時期は人間も知っているから、かなり前にハデスに会ってまた再会して結婚の約束って無理があるよね?


「えっと……わたしがニホンでえっと……この身体は神様が与えてくださって……皆はわたしの婚約者が、その……」


 魔族だって知っているの?

 なんて訊けないよね。


「ペリドット様? 恥ずかしいのですね。かわいいです!」


 ……?

 もしかして、吉田のおじいちゃんが記憶操作をしたのかな?


「あの……星空の下で手を繋いで波打ち際を歩いたり……とか、わたしが作ったお菓子を一緒に食べたりとか……するよ?」


「きゃあぁぁ! 素敵!」

「羨ましいです! わたしなんて会った事もない二十も年上の男性と政略結婚する予定なんです」

「わたしも似たようなものよ」


 皆、貴族で何不自由なく暮らしているように見えるけど、そうでもないんだね。


「そんなに良いもんじゃないぞ」 


 ……!?

 ベリアル!?

 何を言い出すの!?


「ヒヨコ様は婚約者様の事をご存知なのですね。どのようなお方なのですか?」


 いや、やめて!

 本当の事なんて言ったらドン引きされちゃうよ!

 お願いだから『暗殺大好きで仕事をしてない』なんて言わないで!


「……あいつが優しいのはぺるみにだけだ。筋肉バカでいつも怖い顔をしてるんだ。やたら強いし、口を開けば怖い事ばっかり言うし。でも、ぺるみにだけは甘々なんだ」


 あぁ……

 言っちゃったよ……

 さすがにこんな話を聞いたら怖がるんじゃないかな?


「「「……」」」


 ほら、皆黙っちゃったよ?


「あの……全然怖くないんだよ? すごく優しいの。いつも優しく髪を撫でてくれるし。だから……」


 上手く言えないよ。

 どうしよう。


「素敵! 素敵です! 皆には怖いのに婚約者であるペリドット様にだけは優しいなんて!」

「羨ましいです! あぁ……わたしも筋肉のある方と結婚したいです」

「ペリドット様にだけ甘々!? 興奮し過ぎてクラクラします!」

「もしや、婚約者様は騎士団長か何かですか? 普段は厳しい男性が大切な人の前だけでは穏やかな表情になる……きゃあぁぁ! 素敵!」


 ……!?

 いい感じに美化してくれたみたいだね。

 助かったよ。

 このままずっとそう思い続けてもらおう。


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