公女は全然反省していなかったね
「公女、わたしも遅刻ギリギリだったんだよ? 公女も朝寝坊したのかな?」
無視されても話しかけちゃうからね。
「……」
おぉ……
また無視したね。
「公女、朝食は? まだだったら一緒に食べよう?」
「……」
「公女は……」
「うるさいわね! 何なの? 哀れんでいるの? ふざけないでよ。優しい振りをして近づいて何が望みなの!?」
やっと口を開いたね。
さすがの公女もさっきの陰口には傷ついたみたいだね。
「友達になりたいんだよ」
「はぁ!? なんでわたしがあんたとなんか!」
「わたしの国にはアカデミーに通ったら友達を百人作ろうねっていう歌があるんだよ?」
「はぁ!? バカじゃないの?」
「わたし、友達を百人作りたいの。公女にも友達になって欲しいな」
「嫌よ! わたしには友なんて必要ないのよ! 友は自分と同じレベルでなければ意味が無いわ? このクラスにわたしのレベルに近い者なんていないんだから」
「え? でも一緒にお昼を食べたりする友達がいるんでしょ?」
「はぁ!? あんな連中と一緒にしないでよ! わたしは高貴なの。特別なのよ?」
うわぁ……
余計な事を言わせちゃったよ。
皆と仲良くして欲しかったのに。
「えっと……公女は……そうだ! 今日のお昼を木陰で食べようって話していたの。もし良ければ公女も……」
「はっ! これだから田舎の王女は……地べたにでも座るつもり?」
「え? 敷物は使うけど? すごく楽しいよ? 外で食べるご飯はいつもよりもっともっとおいしいの!」
「話にならないわ。下品よ。もう話しかけないで」
「え? なんで? わたしは話したいよ? 公女は朝寝坊したのかな? 昼食が嫌なら次の休み時間に一緒に朝食を……」
「わたしは寝坊なんてしないわよ! 陛下に会いに行っていたのよ!」
「え?」
付きまとうなって言われたんじゃなかった?
「陛下がわたしを罰しなかったのは、わたしを愛しているからなのよ? 陛下は恥ずかしくて昨日あんな事を言ったの」
「ぷっ」
ん?
お母様!?
今、吹き出したよね?
「……何なの? その白いのが今、笑ったの?」
「あ……うん。なんか、ごめん」
「はぁ!? どうして笑うのよ!?」
「え? あぁ……あの……えっと……それで、王様には会ったの?」
「会えなかったわ。陛下はお忙しいから」
「えっと……決まりは守らないとだよ?」
「はぁ!? 決まりって何よ?」
「えっ? それはここでは……」
「何なの? はっきり言いなさいよ!」
「……ここじゃ言えないよ。とにかく、決まりは守らないと公爵家が困るんだよ?」
「そんなの平気よ。おじい様は王より偉いんだから」
「え?」
公爵家ではいつもそんな話をしているの?
不敬罪で捕まらないのかな?
「いつもそう話しているもの、間違いないわ?」
「……王室侮辱罪で捕まるよ? そんな事を言ったらダメだよ」
「はぁ!? 先代の陛下は全然仕事をしないからおじい様が代わりをしていたの。だからおじい様が一番偉いの!」
なるほど。
それでリコリス王国はダメになったのか。
「でも今は違うでしょう? 今の王様はすごく立派だよ?」
「若いだけで何も知らない陛下におじい様が色々教えてあげている最中なのよ。ふふ。だから王妃にはわたしがなるべきなのよ」
若いだけで何も知らない陛下?
公爵が毎日そう言っているから公女はそれを信じているんだね。




