ずっと一緒に(3)
「ほれ、そこを見てみろ」
吉田のおじいちゃんの指差す方を見ると水晶の中に入っているヴォジャノーイ族の頃のハデスの身体が見える。
「……! じいじ……」
久しぶりに見た姿に涙が溢れてくる。
水晶に触れると……
「冷たい……」
水晶じゃなくて……凍っているのかな?
「こんなに冷たかったら……かわいそうだよ」
「そうだなぁ。ドラゴン王が来たら腐らねぇようにしてもらおうなぁ」
「……うん。ずっと側にいたのに気づかなくてごめんね」
「ペルセポネ……ペルセポネはヴォジャノーイ族の頃のわたしの姿を醜いとは思わなかったのか?」
ハデス……
そんな……
醜くなんてないよ?
「一度だって、思わなかったよ? じいじは……いつも優しい瞳をして、わたしを撫でてくれたから」
「そうか……」
ハデスが優しく、寂しそうにヴォジャノーイ族の頃の身体を見つめている。
「おじいさ……吉田のおじいちゃん。じいじの身体をルゥの隣に眠らせてもいいかな?」
「……そうだなぁ。いいんじゃねぇか?」
「ずっと……ルゥが一人で眠り続けるなんてかわいそうだったの。隣にじいじがいてくれたら、きっと寂しくないよ……」
「ぺるぺるの言う通りだなぁ。そうしてやろう」
「うん……ばあばが群馬から帰ってきたら腐らない術をかけてもらうから……それまでは氷の中で我慢してね。ごめんね。じいじ……」
眠るルゥの身体の為に、前ウェアウルフ王のお兄ちゃんが第三地区に建ててくれた家に向かう。
じいじの身体はヴォジャノーイ族のおじちゃん達が運んでくれている。
氷が割れたら、じいじの身体ごと割れちゃうかもしれないから慎重にゆっくり歩いている。
氷が大き過ぎてルゥと同じベットには眠れないから布を敷いた床にいてもらう事になった。
「あぁ……まるであの頃のようです。前王様がいて……姫……前王妃様がいて……」
「そうだな。懐かしい」
「あの頃とはずいぶん状況が変わったからな」
ヴォジャノーイ族のおじちゃん達が懐かしそうに話している。
「もう少し大きいベットを作りましょう。前王が聖女様と一緒に眠れるように」
前ウェアウルフ王のお兄ちゃんが家に入ってくる。
「ありがとう。お兄ちゃん。幸せの島は誰もいない時間があるから……いつも賑やかな第三地区にいられてルゥも喜んでいるはずだよ?」
「聖女様は賑やかな事がお好きでしたから。きっと喜んでおられますね。それにしても……前王の身体が第三地区にあったとは」
「うん。地上の血が入っていると天界には入れないからね。わたしもじいじを見た時には驚いたよ」
「……聖女様と前王は、いつも仲良しでしたから。今もお二人とも笑っているように見えますね」
「ルゥとじいじの身体には……巻き込んで申し訳なかったけど……すごく感謝しているの。二人のおかげで今こうして幸せに暮らせているから。ちゃんと幸せにならないといけないよね……」
「はい。ぺるみ様が笑顔でいる事が皆の幸せなのですよ? これからは前だけを向いて生きていきましょう」
「ありがとう。お兄ちゃん……」
前だけを向いて……か。
わたしとハデスが出逢う為に巻き込んでしまった人達には申し訳ない気持ちでいっぱいだけど……
感謝の気持ちを忘れないで生きていこう。
一日一日を大切に……笑顔で。