おじいちゃんから語られた真実(1)
今回は初代の神である吉田のおじいちゃんが主役です。
あれは、わたしがまだ初代の神だった頃。
まだヘスティアが産まれる遥か昔の事。
わたしは母でもある妻との間に子を授かった。
だが……産まれてきたのは、とても天族とは思えない容姿の『化け物』だった。
わたしは、その現実を受け入れられずに……その子を捨てたのだ。
今になって考えれば決して赦されない行為だったが、あの頃のわたしはどうかしていたのだ。
そして、わたしはこの『人間と魔族の世界』を創った。
強く虐げる側の『魔族』と、弱く虐げられる側の『人間』のいる世界。
どう見ても醜く、人間に見えないわたしの息子はこの中で『魔族』に分類された。
魔族だけの世界を創っても良かったが……
愚かなわたしは、息子を手離した事を正当化したかったのだ。
『わたしの息子は産まれながらの化け物だった。ほら見ろ、今も弱い人間を虐げている。だから、わたしはあの化け物を天界から追放したのだ』と。
だが、わたしはすぐに自分の考えが間違えていたと思い知らされた。
確かに、魔族は醜く人間を食べたが、必要以上の命を奪ったりはしなかった。
それどころか、この世界ができたばかりの頃は人間も魔族も一定の距離を保ち助け合いながら仲良く暮らしていたのだ。
わたしの息子は魔族の中で育っていった。
そして……青年になると人間との間に娘が産まれた。
その頃は『子孫繁栄の実』が無くても異種族同士で子を授かる事ができたのだ。
わたしは、思った。
『美しい天族同士の子でさえ化け物だったのだ。産まれてくる子は醜い化け物に決まっている』
だが、産まれてきたのは美しい人間の姿の娘だった。
銀の髪に青い瞳のかわいらしい赤ん坊。
なぜだ?
わたしの息子はこんなに醜いのに……
なぜ化け物の姿で産まれてこないのだ?
その頃、子を捨てた事や他にも色々あり……妻と天界にいる息子の一人に局部を切り取られたわたしは、天界から姿を消した。
そして、この世界で魔族の姿になり息子の側にいる事にした。
きっと、今に悪さをするはずだ。
きっと今に……
だが……息子は日々を穏やかに……離れて暮らす人間の家族を想いながら暮らし続けた……
……(そう見えた)
いつの間にか、わたしと息子は友になっていた。
常に……優しい……あの子はわたしを……この愚かなわたしを癒してくれた。
長過ぎる時間の中で離れて暮らす人間の家族が亡くなる時は……見ていられないほど落ち込んで、かける言葉も見つからないほどだった。
そして、何人も家族は亡くなり……
その頃の魔族達は、自分達の種族を増やす為に人間の娘を拐うようになっていた。
それは、今までいなかった新しい種族の誕生に繋がっていった。
このままでは、弱い人間の女性が無理矢理子を産ませられ続ける事になると考え、慌てて『子孫繁栄の実』を創りだした。
それから、異種族同士ではその実を食べなければ子は授からず、産まれてくる子は母親の種族になるという『この世界の決まり事』ができた。
その頃のこの世界はもう人間と魔族との仲が悪くなっていて、息子はもう人間の家族とは共に暮らせない状況になっていた。
息子は小さな島でわたしと二人で暮らしていた。
その島は、今では幸せの島と呼ばれている……第三地区の隣にあるあの島だ。