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おじいちゃん……全てを話す時が来たんだね

 フラフラと布団から出ると外に走る。

 上手く走れないよ……

 足がもつれる……


「ぺるみ? どうしたんだ?」


 おばあちゃん……

 吉田のおじいちゃんが……

 吉田のおじいちゃんが出て行ったんだよ。

 わたしのせいだ……

 わたしのせいで……


 外に出ると、第三地区の皆が朝食の準備をしている。


 吉田のおじいちゃんは?

 いない……

 本当に出て行ったんだ。


「……っ」


 涙が止まらない……

 わたしが……おじいちゃんを追い出したんだ。

 あんなに大切にしてもらったのに。


「どうしたんだ? ぺるみ、誰かに泣かされたんか? 誰にやられた? やっつけてやるぞ?」


 雪あんねぇが心配して駆け寄ってくる。

 第三地区の皆もベリアルも心配そうに近寄ってくる。


「わたし……酷いの。酷い事しちゃったの。わたしのせいで……吉田のおじいちゃんが……うぅ……」


「ぺるみ? この前からどうしたんだ? 晴太郎はれたろうと何かあったのか? 話してみろ?」


「雪あん姉……うぅ……わたしが悪いの。全部わたしが悪いの……それなのに……わたしがいなくなれば良かったの……ごめんなさい」


「ぺるみ……晴太郎はれたろうに謝りてぇのか? おーい! 晴太郎! ぺるみが泣いてるぞ?」


「……え? 晴太郎……? 吉田のおじいちゃんがいるの?」


 いなくなったんじゃないの?


「ん? ぺるぺる? どうしたんだ? 怖い夢でも見たんか?」


「吉田の……おじいちゃん……? うぅ……っ……ごめんなさい……ごめんなさい」


 立っていられずに、その場にしゃがみ込む。 

 身体がガタガタと震えているのが分かる。


「なんでぺるぺるが謝るんだ? 悪いのは全部じいちゃんだ」


「……いなくなったんじゃないかって……思って……うぅ……」


「……ぺるぺるは何も悪くねぇさ。悪いのは全部じいちゃんだ」


「おじいちゃん……」


 ん?

 手に何か持っている?

 何か探しに行っていたの?


「第三地区の皆……オレは……皆に嘘をついてきたんだ。だから……ハリセンボン飲もうかと獲ってきたんだ」


 え?

 針千本?

 ん?

 手に持っているのは魚みたいだよ?


「おじいちゃん? それ、魚だよね?」


「なかなか見つからなくてなぁ。やっと獲ってきたんさ。今から飲むから見ててくれ」


 ん?

 まさか魚のハリセンボン!?

 ガタガタ震えているよ!?


「その子……怯えているよ!? 居た所に返してこないとダメだよ? かわいそうだよ?」


「んん? そうか? 嘘ついてたから飲もうかと思ったんだけどなぁ」


「とりあえず、海に戻そう? 後で家族の所に返してあげるから少しだけそこにいてね? 怖かったね。もう大丈夫だよ?」


 ハリセンボンを海に戻すとまた身体が震え始める。


「どうしたんだ? ぺるぺるは寒いんか? ん?」


 波打ち際に座り込むと立てなくなる。


「足が震えて……立てないの……安心して……良かった……おじいちゃん……良かった」


「ぺるぺるは本当に優しいなぁ。そうか、そうか。……すまなかったなぁ」


「おじいちゃん……悪いのは全部わたしなんだよ」


「……いや、全部じいちゃんが……わたしが悪いのだ」


 おじいちゃん?

『わたし』って言った?

 いつもは『じいちゃん』とか『オレ』とか言うのに……

 まさか、第三地区の皆にも自分が初代の神様だって話すつもりなの?

 それでハリセンボンを捕まえてきたの?


「晴太郎? どうしたんだ? 『わたし? 』今までそんな風に自分を呼ぶ事なんて無かっただろう?」


 おばあちゃんが、いつもと違うおじいちゃんの姿に心配そうな顔をしている。

 第三地区の皆も朝食の準備の手を止めて話を聞いている。


「……すまない。今まで黙っていたが、わたしはウラノス……天界の初代の神であり……ぺるぺるの魂の父親だ。天ちゃん……デメテル、そこにいるな? ヘラとヘスティアも聞いて欲しい。ポセイドンは……海にいるか。ベリアル……」


 おじいちゃん……

 本当に全部話すつもりなんだね。


「これから話すのは、ぺるぺるの知らない事も含まれている。聞くのが辛いかもしれないが……最後まで聞いて欲しい。それから……お月ちゃん……わたしは……心からお月ちゃんを愛している。それだけは、嘘が無かった。どうか、信じて欲しい」


「晴太郎……」


 おばあちゃんが辛そうな顔をしている。

 まだわたしの知らない話があるんだね。

 

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