指切りしたんだから……お願いだよ
「おじいちゃん……いなくならないよね? ずっと……これからも側にいてくれるよね?」
お願いだよ。
おじいちゃんの事が大好きなんだよ。
「ぺるぺる……」
辛そうな顔……
嫌だよ!
絶対に嫌だよ!
おじいちゃんは寂しがりやなんだから、ひとりぼっちになったおじいちゃんの姿なんて考えたくないよ。
「お願いだよ……わたしだけじゃないよ? おばあちゃんだって寂しくて耐えられないよ……」
「お月ちゃん……? お月ちゃん……」
「第三地区の皆だって寂しいはずだよ?」
「……」
「もし……おじいちゃんがどこかに隠れても……わたしは捜しに行くよ? 見つかるまで何年だって何千年だって捜すよ? おじいちゃんは大切な家族だから」
「家族……」
「おじいちゃん……約束……しよう? あの時は指切りをしなかったよね? おばあちゃんが群馬で亡くなった時の『死ぬ時は一緒に死んでやる』っていう指切り……覚えている?」
「覚えてるさ……忘れるはずがねぇ……ルーは自分を責めて、今にも自殺しちまいそうで……だから、もしそうしてぇなら一緒に死んでやろうと思って……」
「わたしね? この世界に来て考えたの。あの時、指切りをしなくて良かったって……おじいちゃんを巻き込まなくて良かったって。指切りをしていたらおじいちゃんも、わたしが溺死したあの時、あとを追っていたかもって……」
ダメだよ……
涙が止まらない……
ちゃんと話さないといけないのに……
「ルー……」
「今度は……ちゃんと指切りしよう? ずっとずっと一緒にいるって……おじいちゃん……お願い……おじいちゃんは罪滅ぼしだとしても……傷つき過ぎだよ……お願いだから……ひとりぼっちになんてならないで……」
「……」
おじいちゃんの胸の前に小指を立てた右手を伸ばす。
お願い……
指切りして?
震えるおじいちゃんの小指が、ゆっくりとわたしの小指に絡みつく。
「おじいちゃん……約束だよ? 嘘ついたら針千本だからね?」
「ハリセンボン……」
震えながら抱きつくと、おじいちゃんの身体も震えているのが伝わってくる。
「約束だよ? 約束……絶対いなくならないでね? おじいちゃん!」
「約束……約束……か。ぺるぺる……すまねぇなぁ……じいちゃんを赦してくれ……」
え?
おじい……ちゃん?
目の前が……暗くなっ……
気がつくと……
おばあちゃんの布団で……眠っていたの?
幸せの島のガゼボにいたはずなのに。
どうして?
まさか……おじいちゃんに眠らされた?
じゃあ、おじいちゃんは?
おじいちゃん……
胸のドキドキが苦しい……
嫌な予感がするよ。
「お? ぺるみは起きたんか?」
おばあちゃん?
こたつでお茶を飲んでいる……?
おじいちゃんは!?
どこにいるの!?
「おばあちゃん! 吉田のおじいちゃんは!?」
「あぁ……昨日の夜、ぺるみが砂浜で寝てたって連れてきてくれてなぁ。そういえば今朝はまだ起きてこねぇなぁ」
まだ……起きてこない?
まさか……
まさか……
ダメだよ……
ダメ!
いなくなったりしていないよね?