精霊は優しい人間が好きなんだね
「……? 透明っていう事?」
透明なドラゴンがいたのかな?
それとも、誰かが水で創ったドラゴンとか?
「よくは分からないのです。かなり昔の出来事で、人から人へ語り継がれたものですから……」
「なるほどね。ちょっとこの辺りにいる精霊に訊いてみるね?」
「え? 精霊様……ですか? え?」
王様が戸惑っているね。
分かるよ。
いきなり『わたし精霊と話ができるんだ』なんて言われたらドン引きだよね。
この辺りに精霊は……
下位精霊は色々な所にいるんだよね。
うーん。
あ!
いたいた!
「そこの精霊! わたしの声が聞こえる?」
小さい妖精みたいに見えるね。
下位精霊かな?
(え? わたしが見えるの?)
「うん。見えるよ? ずっとこの国にいるのかな?」
(え? そうだよ? ずっとジャックにいるよ?)
「ん? ジャックにいるよって? アカデミーに行っている……今ここにいるジャック?」
(え? 違うよ? この国の名前がジャックなの)
「……? えっと? ん? どういう事?」
(大昔に勇者がこの地に来たの。その時、まだこの辺りは荒れ地で『国』ではなかったの。その勇者の名前がジャックだったんだよ?)
「え? 勇者がジャック……なるほどね。ってそうじゃなくて……あなたは水の精霊みたいだけど、違うかな?」
(そうだよ? 水の下位精霊だよ? 何か用かな?)
「わたしが水を降らせると問題になっちゃうんだけど、この地の精霊が降らせたなら誰も文句は言えないからね。水を降らせられるかな?」
(うーん。この国に水の力を持つ人間は今はいないから。でも魔力の変換ならできるよ?)
「なるほどね。うーん」
勝手に精霊が水を降らせたらダメみたいだね。
魔力の変換か……
精霊が魔力の変換をしている事は人間は誰も知らないみたいだから、内緒にしたいんだけど……
どうしようかな?
(ふふ。ジャックとマリーが帰ってきて嬉しいな)
「……ずっとこの地にいるのはどうしてなの? 他にも精霊はいるの?」
(いっぱいいるよ? 精霊は優しい人間が好きだからね)
「じゃあ、この地にいる水神様って知っているかな?」
(うん。知ってるよ? あれは勇者がやったんだよ? わたしが変換したの)
「え? そうだったの? じゃあドラゴンじゃないんだね」
(そうだよ?)
「えっと、それって人間に話しても平気かな?」
(いいよ?)
「あのね? 今ここに精霊がいるんだけど『水神様』はこの精霊だったみたいだよ?」
「それは……どういう?」
王様が戸惑っているね。
「精霊の水の力を見た人間が水神様だって言い始めたみたいだね」
「なるほど。では水神様は、今この辺りに?」
「うん。いるよ?」
「なんと……ありがたい」
「この国は皆優しいから、ずっとこの地にいるって言っているよ? あと……条件が合えば水を降らせてくれるらしいよ?」
「条件……ですか?」
「うん。詳しくは教えられないんだけど」
「あの……実は隣国に川を使わせてもらえるようにお金を払おうと思っています」
「え? そうなの?」
皆の川なのに使用料なんて……