やっぱり闇の魔法石を製造していたんだね
アルストロメリア王を送り届けると、ベリアルにこっそり頼んで誰もいない小高い丘に空間移動してもらう。
さて、マグノリア王とデッドネットル王に話を訊かないとね。
「……従者達には聞かせない方がいいのかな?」
これで通じるよね?
「……わたしは、聞かれて困る事はありません」
マグノリア王の従者は魔法石の製造に関わっているみたいだね。
「はぁ……勘の鋭いお方ですね。わたしも構いませんよ?」
デッドネットル王も認めたね。
「魔法石を製造しているんだね? まさか……闇の力を入れようとしているの?」
「……いつからそれを?」
マグノリア王が真顔になったね。
「さっきアルストロメリア王の昔話を聞いた時かな? あれはリコリスに伝わる物じゃなくて四大国の王だけに伝わる話だった……違う?」
「……ほぉ」
『ほぉ』か。
デッドネットル王は薄ら笑いを浮かべているね。
人間の分際で……
愚かだな。
……?
え?
まただ。
怖い考えをしている……
わたし、どうしちゃったんだろう。
ダメだ。
落ち着こう。
「ペリドット様は……何か知りたい事でもあるのですかな?」
マグノリア王は、ずっと真顔だね。
「昔……シャムロックの王女が二代前のアルストロメリア王に無理矢理神力を奪い取られて海に捨てられた。その時、王は新たな魔法石を作ろうとしていたんだよね?」
「……そこまでご存知とは」
「別に新たな魔法石を作る事は、いいんだよ? ただ、わたしは……その為に誰かを傷つける事が赦せないんだよ」
「……ペリドット様は闇の魔法石を何に使うかまではご存知無いのですかな?」
「先々代のリコリス王は現アルストロメリア王にあの昔話を知っているか遠回しに確認した。という事は、おじい様も魔法石を製造していたんだね。でも、確認しただけで製造を促さなかった。つまり、他国が魔法石を製造する事を良くは思っていない。っていう事は闇の魔法石を作り出した国が四大国の頂点に立てるっていう事かな?」
「……合っているようで間違えてもいる。といったところですな」
「二人は誰かを犠牲にして、闇の魔法石を製造しようとしているの?」
「……結局、神力を持つ者が産まれなくなったのは魔法石の製造が原因でした。愚かにも先程まで気づきもしませんでした。ですが、わたしはやめません。マグノリア王もそうなのでは?」
「……今、四大国でこの闇の魔法石の製造を知るのは二国だけになりました。マグノリアが先か、我がデッドネットルが先か……ですね」
マグノリア王とデッドネットル王はバチバチだね。
「問いの答えになっていないよ? 誰かを犠牲にして製造しているの?」
「……なぜ、強い神力を持つ女性がいなくなったのか。かなり遠回りですが……それが答えです」
マグノリア王……
まさか神力を持つ女性から無理矢理神力を奪っているの?
いや、違うね。
今はもう神力を持つ女性が存在していないのは事実だよ?
「今現在、神力を持つ人間は司教しか存在していないよ? 司教には魔法石に神力を入れられる程の力は無いし、どうやって神力入りの魔法石を製造しようとしているの?」
「……それは国家機密ですので。ですが、生きている人間から無理矢理神力を奪ってはいませんよ?」
「二人が何をしようとしているのかは知らないけど闇の力は危険だよ? 失敗すれば自国だけじゃなく、この世界を滅ぼしかねないよ? 世界が滅びる事を望んでいるの?」
「……ペリドット様は死者を蘇らせる事ができますか?」
「え? マグノリア王?」
できるけど、色々条件はあるよ?
亡くなってすぐじゃないといけないとかね。
切り落とされた腕が生えてくる事はないし、骨に治癒の力を使っても肉は再生されない。
でも言う必要は無いね。
「できるのですか?」
「誰かを蘇らせようとしているの? 代々の四大国の王様が同じ人間を?」
「……これ以上は話せません」
「そう……わたしはお兄様にもアルストロメリア王にも話さないよ。でも、危険な事はやめて?」
「……聖女様……を……」
「え?」
聖女様?
わたしの事……じゃなさそうだね。
「いえ……わたしは……神々しく民の前に立つペリドット様も好きですが……楽しそうな笑顔のペリドット様も好きですよ?」
「……? マグノリア王?」
一体何をしようとしているの?
危ない事じゃないといいけど。