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リコリス王国に伝わる昔話

「ここだよ? 危なくはないはずだけど気をつけて?」


 お兄様に手を繋いでもらって牢の入り口まで歩くと、確かに壊れた神聖物がある。 

 うーん。

 闇の力で壊れた……ねぇ。

 どう見ても誰かが物理的に壊した感じだよね。


「中に入って魔法陣を見てもいい?」


 まぁ、偽物だろうけどね。


「うん。足元に気をつけて? ほぼそのままになっているからね。掃除をしていないんだ」


 ほぼそのままに……ねぇ。

 遺体だけ取り出してあとはそのままっていう事かな?


「これ? 魔法陣って?」


 床に黒くそれっぽいのが描いてあるけど。

 うーん。

 臭い……

 何かの血で描いたのかな?

 はぁ……

 偽物確定だね。

 魔法陣は詠唱で呼び出した精霊が描く物であって人間が描いても魔術は使えないんだよ。

 生まれ持っての魔術なら詠唱無しで使えるけど人間はそれを知らないし、魔法陣を描けば魔術を使えると思っているのか。

 魔術に対する知識が無いから人間の持つ魔力は衰退していったのかな?

 知識が無くて、こんなお粗末な事をしたのか。

 でも、それを人間に教えたらダメだよね。


「えっと……この魔法陣は落書きだよ? 何の意味も無いね。この魔法陣で闇の力は使えないよ?」


「……なぜですか?」


 マグノリア王はきちんとした理由が知りたそうだね。


「うん。前にも話したけど、わたしは魔族側にいるの。これ以上詳しくは話せないよ。でも、入り口の神聖物が偽物だっていう事を犯人は知らないよね? 本物だって信じているから闇の力を使ったように見せたくて、わざと壊したんだよ」


「なるほど。確かに偽の神聖物がなぜ壊れているのかは疑問でしたが……」


「犯人は闇の力に見せかけたかったみたいだね。でも、なんで?」


「それはリコリス王国の言い伝えを利用しようとしたのかもしれませんね」


 アルストロメリア王がハンカチで口元を押さえながら話しかけてくる。

 

「言い伝え? アルストロメリア王はどうしてリコリスの言い伝えを知っているの?」


「先々代のリコリス王から……昔話としてですが」


「昔話として?」


「あぁ……いえ。若い世代にはもう知る者も少ないようです。リコリス王も知らないのでは?」


「はい。わたしはリコリスで育ちませんでしたから」


 そうだね。

 お兄様がリコリス王国に来たのは最近だからね。


「では、話しましょう。遥か昔、リコリス王国では人を操る魔術師が存在したようです。若く美しい魔術師は王を魅了し子を産みました。ですが、王は魔術師が子を愛する姿に激高し子を捨てたのです。その事を知った魔術師は王に呪いをかけました。『お前はこれから子を授かる事は無いだろう。全てを呪ってやる。もしこの先お前が少しでも幸せになろうものなら闇の力が破滅に導くだろう』そう言い残し魔術師は姿を消しました。それから、王は何年経っても子を授かる事はありませんでした。そして十数年後、捨てた子と魔術師が王を伐ち新王として君臨したそうです。その時代から魔法石を作り出す技術が生まれたとか……」


「……それって」


 似てるね。

 お兄様の生い立ちにそっくりだ。

 お兄様の母親の場合は嫉妬した側室に拐われたんだけどね。

 

「それは、事実なのでしょうか? それとも、作り話でしょうか」


 お兄様も初めて聞いたんだね。

 やっぱり自分に似ているって思ったのかな?


「先々代のリコリス王もそれが事実かは分からなかったようです。リコリス城は遥か昔に火災が起こりそれ以前の記録は全て燃えてしまったそうですし」


 過去に火事に?

 その魔術師って魅了の力があったのかな?

 じゃあ、リコリス王国の王族は魔術師の子孫っていう事?   

 うーん。

 魔族の誰かに訊けば分かるかな?

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