先々代のリコリス王はかなり上手くやっていたみたいだね
全部のお店の料金表を作り終えると王様達とわたしとベリアルはリコリス城に馬車で向かった。
さすがは大国の王様の馬車だね。
五人とベリアルで乗ってもまだ余裕があるよ。
「……どうして王様達は市場に来たのかな?」
偶然なんて事はないよね。
「ああ、神殿のお披露目の会場で市場の者達が『姫様が遊びに来る』と話しているのを耳にしまして、もしかしたらペリドット様かと。どのような事をしているのかと様子を見に来たのです」
デッドネットル王……
ベリアルをご機嫌で抱っこしているね。
初めて会った時とは大違いだね。
あの時は水攻めにしたけど怒っていないみたいだよ。
「そうだったんだね。王様達がお手伝いしてくれるなんて驚いちゃった。市場の人間も喜んでいたね」
「王になると民と共に何かをする事もありませんから、有意義な時間でした。わたしもデッドネットルに帰国次第、平民の為の市場を作ろうと思います。生活困窮者に配給をするのではなく自ら商売をし生きていく事ができれば国にとっても良い事です。なにより、市場の民は皆生き生きとしていました」
「配給を待つだけじゃなくて、自ら商売をする事で生きる希望ができるんだろうね。皆誇りを持って商品を作っているんだよ?」
「はい。見ていて良く分かりました。リコリス王は若い分、柔軟に物事に対応できるのでしょうか。若き王には頭が下がります」
「市場の人間もお兄様には感謝していたよ? 家もお店も与えてくれたって」
「そうでしょうな。あの笑顔を見れば分かります。『幸せは民と共に』でしたかな? 先々代のリコリス王を見ているようですな」
「えっと……おじい様の事だよね?」
確か裏では悪どい事をしていたんだよね。
「素晴らしい王でした。まだ、わたしが王太子の頃にはお世話になったものです」
「そうなんだね」
悪い事をしていたって知ったから素直に喜べないね。
「ペリドット? アカデミーでは苦労はない?」
お兄様が心配そうにわたしを見つめているね。
「うん。大丈夫だよ? クラスメイトとも仲良くなったの」
「そう。良かったよ。嫌がらせをされていたらどうしようかと思ったよ」
「皆優しくしてくれるから大丈夫だよ?」
「公女とは同じクラスみたいだね」
「あぁ……うん」
「ペリドットはどこまで知っているのかな?」
「えっと……」
他の大国の王様もいるけど話していいのかな?
「この件はリコリスだけの問題では済まないんだ。闇魔法……ペリドットは分かる?」
「あ……うん」
「闇魔法について人はほぼ何も分からなくてね。知っている事があれば教えてくれるかな?」
お兄様は今、海賊の魔族と会えないから情報が入ってこないんだね。
「その事なんだけど……牢に魔法陣が残されていたんだよね?」
「そうなんだ。そのまま保存してあるんだけど……」
「今もあるの? 今から見せてもらえるかな? 王様達も揃っているし」
「実はペリドットに見てもらいたいと話していたんだよ。今は魔法陣に闇の力は無くなったみたいだから危なくはないらしいんだけど」
うーん。
まだ、見ていないから分からないけどたぶんその魔法陣はただの落書きだよね?
牢の入り口にあった神聖物が壊れていたとも聞いたけど、神聖物は偽物だからね。
犯人が闇魔法に見せかける為にわざと壊したんだろうね。
っていう事は闇の力を使える人間はいなかった?
でも、闇の力は残っていた。
誘拐犯の公爵はどこで闇の痕跡を残す方法を知ったのかな?