自分を慕ってくれる人達に変態だとばれた時の沈黙が怖い
「よし! 市場に行ってからリコリス城に行くぞ! モグモグ」
ふふ。
ベリアルはすっかりいつも通りだね。
いっぱい泣いてお腹が空いたのかな。
赤ちゃんみたいだね。
つむじもいつも通りかわいいし。
抱っこしているから、つむじの見放題だよ。
ぐふふ。
「うん! じゃあ行ってくるね!」
……あれ?
吉田のおじいちゃんがいないね。
珍しいね。
お見送りしてくれないなんて。
忙しいのかな?
「市場の皆が眩しくないように誰もいない場所に移動するからな」
「うん。ありがとう。気を遣えるヒヨコちゃんもかわいいねっ!」
「えへへ。お菓子をいっぱい買うんだ! ハデスがおこづかいをいっぱいくれたんだっ! マリーとジャックの分も買ってやるんだ。じゃあ、出発だー!」
空間移動の光は眩しいけど、だいぶ慣れてきたね。
ベリアルは全然眩しくないみたいだけど。
「ぺるみ、早く早く! クッキーとカルメヤキとあとは……ジュースも飲みたいぞ!」
「ふふ。そうだね。端から端まで全部食べちゃおうか。でもひとつずつだよ? さすがにお腹に入らないからね」
「えへへ。うん」
ベリアルはご機嫌でかわいいね。
筋肉ムキムキの姿もなかなか良かったけどね。
ぐふふ。
「おーい! カルメヤキのじいちゃん!」
「あぁぁ! ヒヨコ様だ! 姫様! さっきは大丈夫でしたか?」
「あのお貴族様は最悪だったな! 思い出しても腹が立つ」
「姫様、ヒヨコ様! こっちで甘い物でもどうぞ! その後にしょっぱい物を食べて、また甘い物をどうぞ!」
おぉ……
甘い物としょっぱい物を交互に食べるといっぱい食べられるよね。
ベリアルがヒヨコちゃんの姿とムキムキの姿に交互になったら……
ぐふふ。
無限に吸ったりチョンチョンしたりできるよね。
「ぐふふ。堪らないね、こりゃ」
「うわ……こいつ気持ち悪っ! ジャックはこんな大人になるなよ?」
「う……うん。気をつけるよ」
え?
ジャック!?
しまった。
変態的な言葉を口に出していたのかも。
十歳くらいの子供には聞かせたらダメなやつだよ。
「ジャック……これは違うの……あの……」
「何も違わないぞ? こいつは変態なんだ」
「ちょっと!? 皆の前でやめてよ! 違うの! わたしはただヒヨコちゃんがかわいくて吸いつきたくなっちゃうの。それだけなんだよ?」
「……確かにヒヨコ様はかわいいからな」
「オレだって吸いつきたくなるぞ」
「って事はオレらは皆変態か。あはは!」
「おぉ……そうだよ。そうなんだよ! わたしだけが変態じゃないっていう事なんだよ。皆がヒヨコちゃんに好意を持っているんだから! あれ? っていう事はわたしは正常なんじゃない?」
「……安心しろ。お前は立派な変態だ」
「え? 違うよ? だったら皆も変態っていう事だもん。皆がヒヨコちゃんを好きなんだよ? 皆がヒヨコちゃんを吸ったり撫で回したりしたいんだよ?」
「……皆が……オレを好き?」
「そうだよ?」
「……!」
「ヒヨコちゃん?」
「誰かが自分を好きって言ってくれるのって……気分がいいな」
「……? ふふ。わたしは毎日言っていたよ?」
「え?」
「ヒヨコちゃん大好きって」
「……! そうだったな」
「うん!」
「オレ……幸せだったんだな。幸せ過ぎて気づいてなかったんだ」
「……? わたしはヒヨコちゃんがいるからいつも幸せだけどな?」
「お前は……本当に……(オレもぺるみがいるから幸せだ)」
「ん? 何?」
「なんでもない! 変態め!」
「ええっ!? わたしは正常なんだよ?」
そうだよ。
わたしは変態じゃないんだよ。
たった今、正常だって分かったんだから。
ん?
ふふふ。
プリプリ怒っているから、パンみたいな翼がパタパタしているね。
抱っこしている腕に翼が当たって超絶かわいいよ。
「ぐふふ。ぐふふふ。こりゃ堪らないね」
「「「……」」」
ん?
市場の皆が黙っちゃった!?
まさか……わたし……やっぱり……正常じゃなくて本当に変態……なのかも。