新しいグリフォン王
「まぁまぁ、いいじゃねぇか」
吉田のおじいちゃん……
いや、おじい様?
でも、吉田のおじいちゃんの姿だし。
たぶん、第三地区では吉田のおじいちゃんでいたいんだろうね。
「吉田の……おじいちゃん」
「んん? なんだ? ぺるぺる?」
「あ……えっと……ベリアルがなんで怒っているか分からないの」
「んん? そうだなぁ。すぐに機嫌は直るさ」
「うぅ……抱っこして吸いたいのに……」
「ははは! そうかそうか。あっちに、ぐりほんの新しい王が来てるぞ?」
「え? あっち? 魔王城?」
「星治に呼び出されたみてぇだなぁ」
「呼び出し? どうかしたのかな?」
「うーん。新しい、ぐりほんの王は、まだまだ赤ちゃんみてぇだなぁ」
「赤ちゃん? 大きかったけど?」
「甘やかされて育ったんだろ。(いや、厳しく育てられた……?)」
「グリフォンのお兄ちゃんもパートナーさんも優しいからね」
「優しい……か。種族王だからなぁ。傘下に入る魔族達が暴れださねぇといいけどなぁ」
「……種族王が変わるっていう事?」
「魔族は弱けりゃすぐに王の座から引きずり下ろされるからなぁ。強くても自分勝手なワガママなら誰も付いてこねぇさ。前のぐりほんの王は皆に慕われてたからなぁ」
吉田のおじいちゃんはお父様とは違ってしっかりしているんだね。
さすがは最初の神様だ。
「……グリフォンのお兄ちゃんは、自分とパートナーさんが近くにいると新しい王様が甘えちゃうと思って旅に出たのかな?」
「それもあるだろうなぁ。(あの母親は怖いからなぁ。かわいそうだから父親が気を遣ったのもあるしなぁ)」
「……今、魔王城でお父さんに叱られているのかな?」
「うーん。どうだろうなぁ。でも、口で言ったくらいで性格が変わるはずがねぇからなぁ」
「性格が悪いっていう事?」
「うーん。自分が一番強いと証明してぇみてぇだなぁ。なんなら今すぐ魔王になろうとしてるみてぇだぞ? (魔王になって母親に怒られねぇようにしてぇんだろうなぁ)」
「……お父さんの闇の力を見た事が無いのかな。あれは、すごかったよ?」
「そうだなぁ。あれを見ればすぐ大人しくなるだろうなぁ。まぁ結局は世間知らずの甘えん坊ってところだなぁ。星治も本気で相手にはしねぇだろう」
お父さんは優しいから攻撃はしないだろうけど……
あれ?
「……今、一瞬だけ古代の闇の力を感じたね」
「星治が、かるーく世間の厳しさを教えてやったんだろ?」
「……グリフォン王、怖くて泣いていたりして」
「……だろうなぁ。行くなら今だぞ? 慰めると見せかけて撫でて吸い放題だ」
吸い放題!?
あのかわいいグリフォン王を!?
「うわあぁ! やったぁ、急がなくちゃ! ハデス、魔王城に行ってくるね?」
「一緒に行こう」
心配したハデスが、わたしの方に歩いてくる。
「大丈夫。すぐ戻るから」
ハデスがいたら嫉妬で怒り狂ってモフモフパラダイスにならないからね。
「いや、ダメだ。何があるか分からないからな」
え?
そんな!
心配してくれるのはありがたいけど、困ったな。
グリフォン王を撫で回したいのに。
「あははは! ハデスちゃんは心配性だなぁ。一緒に行ったらいいさ」
うぅ……吉田のおじいちゃんはそう言うけど。
あ、でもお兄ちゃんがグリフォン王の時は撫で回しても怒らなかったし、新しい王様も大丈夫かも。
新しい王様……すごくかわいかったんだよね。
お腹を出して寝っ転がってもらうんだ。
その後いっぱい吸わせてもらおう。
えへへ……楽しみだなぁ。