どうしよう……ぺるみがオレの筋肉に興奮している
今回はヒヨコのベリアルが主役です。
「きゃああ!」
……ぺるみの悲鳴?
オレを見て怖くて悲鳴をあげたのか。
やっぱり、ぺるみもこんな化け物は怖いよな。
「ベリアルだよねっ? ベリアルだよねっ?」
……?
え?
なんだ?
嬉しそうな声?
「うわあぁ! うわあぁ! すごいね! いっぱい食べていっぱい寝たから大きくなったんだね!」
……?
ん?
いや、ヒヨコが大きくなって化け物になるなんて聞いた事無いぞ?
それに、この姿でもオレだって分かるのか?
「いつの間にかママより大きくなって……ぐすん。ママ嬉しいっ!」
「はあ!? 『ママ』じゃないだろ!?」
あ……
しまった。
いつもの癖で……
化け物に大声で怒鳴られたら怖いよな。
「……おばあちゃん……ベリアルは早速反抗期だよ! 思春期だよ! 大変だよ! 母として『ババア』って言われる覚悟をしないと!」
……?
何言ってるんだ?
意味が分からない。
ぺるみをババアなんて呼ぶはずないだろ?
……どうして嬉しそうなんだ?
ぺるみも皆もどうしていつも通りの優しい表情でオレを見つめてるんだ?
オレは化け物なのに。
どうして?
「オレが……怖くないのか?」
「え? どうして?」
「だって、いきなりこんな化け物になったんだぞ!」
「え? 化け物? ベリアルが? 全然化け物じゃないけど?」
「は? こんな顔で……身体も大きくて……化け物だよ!」
「化け物なんかじゃないよ? ベリアルは急に成長したから驚いちゃったんだね。人間も寝ている間に背が伸びるって聞いたけど、そんな感じなのかな? ヒヨコちゃんの姿はブラックドラゴンのおじいちゃんが創ったから、もしかしたら成長したら筋肉ムキムキになるようになっていたのかもね」
「え? そうなのか?」
「訊いてみないと分からないけどね。でも……ぐふふ。なかなか良いね。その胸筋……ぐふふ。ヒヨコちゃんとは違う興奮が湧き出てくるよ。ぐふふ」
「……お前、本物の変態なんだな」
「ぐふふ。自分の息子はどんな姿になってもかわいいに決まっているでしょ? ちょっとその……腹筋とか触らせてみてよ?」
「はあ!? お前はかわいいヒヨコが好きだったんだろ?」
「え? 『かわいいヒヨコちゃん』じゃなくて『かわいいベリアル』が好きに決まっているでしょ?」
「……お前、オレが怖くないのか?」
「どうして? 全然怖くないよ? むしろ……ぐふふ。ちょっと大胸筋とか三角筋とか腹直筋とかを触らせてみてよ? 腹直筋は上部で良いからさぁ。ぐふふ」
「はあ!? なに言ってるか全然分からないぞ? うわあぁ! 気持ち悪いって! チョンチョン触るな!」
「ぐふふ。減るもんじゃないんだから良いでしょ? ほらほら広背筋も触らせてよ。ぐふふふ」
「うわあぁん! ばあちゃん助けて!」
しまった。
いつもの癖でばあちゃんに話しかけちゃった。
怖がるかもしれないのに。
「ははは。ベリアルとぺるみは仲良しだなぁ」
……え?
いつも通り?
どうして?
「ばあちゃんは……オレが怖くないのか?」
「ん? 怖いはずねぇだろ。ベリアルはベリアルだ。なんにも変わらねぇさ」
「ばあちゃん……オレ……怖かったよ……皆に嫌われるんじゃないかって……怖かったよ」
「ははは! そんな事はあり得ねぇぞ? ここにいる皆がベリアルを好きなんだ。それに大きくなったベリアルもなかなかかっこいいぞ?」
「ばあちゃん……」
「それに第三地区は皆、創り物の身体だからなぁ。皆ちょくちょく姿を変えてもらってるからベリアルの姿が変わったからって誰も驚かねぇさ」
「そうなのか? 良かった……」
安心したら身体の力が抜けて座り込んじゃったよ。
はぁ……
とりあえず良かった……




