公女断罪(4)
あぁ……
ゾクゾクするよ。
神様の娘なのに、こういうの……好き。
右手を上に伸ばして現れた風の魔法陣に神力を流し込む。
一人分の竜巻を起こして……力加減が難しいね。
「うわあぁ!」
「おじい様!」
よし。
公爵だけを五メートル位持ち上げて、次は氷だね。
もう一度神力を氷の魔法陣に流し込んで、小さい粒でなるべく怪我をしない程度に……
うーん。
やっぱり加減が難しいよ。
「……! ……!」
公爵が竜巻の中で何か叫んでいるけど良く聞こえないね。
「おじい様ぁ! 誰か……誰か助けて……」
公女が周りにいる貴族に助けを求めているね。
でも、誰も目を合わせないよ。
「なぜ、誰も助けないか分かりますか?」
「うぅ……お前が怖いからだ」
「違いますよ? 公爵が嫌いだからです」
「え? おじい様は皆から好かれているわ?」
「……好かれているのは公爵という地位では?」
「え? そんなはずは……あ! 侯爵! いつもおじい様の近くにいるわよね? 早く助けなさい!」
知り合いがいたのかな?
「申し訳ございません。わたしには、魔力が無くて……」
「お前が代わりにあの中に入ればいいのよ!」
「え? そんな……」
「早く行きなさい!」
おぉ……
貴族達がざわつき始めたね。
「最低だわ。自分が行けばいいのに」
「前から偉そうだとは思っていたが……酷いな」
「もう公爵家は終わりね」
公爵も公女も、かなり嫌われているね。
「な……全部聞こえているわよ? 後でおじい様に言いつけてやるんだから!」
はぁ……
本当に救いようがないね。
「公女が代わりにあの竜巻に入るのなら、公爵を解放しますが……」
「え?」
最後のチャンスだよ。
言うんだよ。
『わたしが竜巻に入るからおじい様を助けて』って。
「……嫌よ。あんな中には入れないわ」
うわぁ……
酷いね。
「なぜですか? 大切なおじい様なのでしょう?」
「痛いのは嫌なの! おじい様は男だから耐えられるでしょう? それに、わたしは王妃になるの。傷ができたら大変よ」
周りの貴族達が静まり返ったね。
確かにこれには呆れたよね。
「もし、今竜巻の中にいるのが公女だったとして、公爵が『公女の身代わりにはなりたくない』と言ったらどう思いますか?」
「え? そんな事は無いわ? おじい様はわたしをかわいがってくれるもの。だって、邸宅でのおじい様は……」
邸宅でのおじい様は?
なんだろう?
考え込んで黙っちゃったね。
「公女は公爵の身代わりにはならないけれど、公爵が公女の身代わりになるのは当然だと思うのですか?」
「え?」
「自分さえ良ければいいと思い違いをしていると、誰からも相手にされなくなりますよ? それに……公爵も公女の身代わりにはならないと思いますよ?」
「……そんな事ないわ。わたしは公爵家で……王妃になって……聖女で……それに、おじい様は……邸宅ではわたしに……」
邸宅では……?
話しにくい事なのかな?
「では、その聖女の力で公爵の傷を癒してください」
公爵を入れた竜巻を地面に下ろすと竜巻と氷を消す。
公爵はうつ伏せに倒れ込んだまま動けないみたいだね。
ありがとう、助かったよ。
(良いのよ。おもしろそうだから最後まで見ていくわね。ふふ)
(そうだな。その偽聖女が傷を治すところを見ていこう)
うわぁ……
二人とも素敵な性格だね。
「うぅ……痛い……早く治療を……」
公爵は痛そうだね。
すごく小さい氷の粒でチョンチョンされたくらいなんだけど。
大袈裟だね。