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公女も被害者なのかもしれないね

 ベリス王がローブを持ってきてくれたお陰で神殿のお披露目が始まった。

 あの嘘ばかりの絵本の読み聞かせが終わると人間達は涙を流して司教の行いを讃えた。

 司教は涙を流して微笑んでいたけど……

 その姿に、わたしも四大国の王様達も呆れ返って言葉も出なかった。

 先生はローブを着た事で救世主として立派に登場する事ができたし、ベリス王は色違いでいくつもローブを売りつけたとこっそり教えてくれた。

 これで、お披露目が終わった後に市場に行って、マリーちゃんとジャックの国に行ったら今日のやる事は終わりか。

 

「なぜですか!? 陛下、今ですよ?」


 ……?

 最前列の奥の方から女性の声が聞こえてくるね?

 陛下ってお兄様の事かな?


 ん?

 お兄様が呆れ果てた顔をしているね?


「(お兄様? どうかしたの?)」


「(公女なんだけど思い込みが激しくてね。何度言っても話を理解してもらえないんだよ)」


「(あぁ……アカデミーでもこのお披露目でお兄様にプロポーズしてもらえるって言っていたよ?)」


「(はぁ……全く……)」


「(誰も信じていなかったよ? 皆ココちゃんが王妃になるって言っていたよ?)」


「(え? あぁ……うん)」


 ふふ。

 お兄様が赤くなったね。

 本当にココちゃんの事が好きなんだね。


「(ちょっと恥をかいてもらおうか?)」


「(え? でも、何を言ってもダメなんだよ?)」


「(やってみてもいい?)」


「(公女が大人しくなるなら。助かるよ)」


 お兄様が疲れているのは公女のせいだったりして……


「(うん。司教も協力してくれる?)」


「(もちろんです。ペリドット様のお役に立てるとは、光栄です)」


 司教が悪い顔で笑っているね。

 ふふ。

 司教とは良い友達になれそうだよ。


「わたしは聖女なの! 今すぐ検査をしてちょうだい! そしてわたしは王妃になるの!」


 おぉ……

 公女はさっきの絵本を理解できなかったみたいだね。

 やれやれ、他の貴族達はもう聖女は産まれてこない事を分かっているみたいだけど。

 この公女はお兄様の事で頭がいっぱいなんだね。

 絵本じゃなくてお兄様を見ていたのかな?

 でも、王妃になりたいのならもっと自分を律しないとダメだよ。

 なんでも好き勝手していいのが王妃じゃないからね。


 さて、始めますか。


「司教? もう神力を持つ者は産まれないと絵本に描いてありましたが……わたくしの考えが正しければ、もう聖女は存在しないのではありませんか?」 


「あぁ……はい。この広い世界で神力があるのはわたしだけです」


 司教の悲しそうな演技に人間達まで辛そうな顔をしているね。

 人間達は絵本を見たからわたしが神様の使いだと思っているみたいだね。

 っていう事はわたしの言葉を神様の言葉だと思うはず。

 気をつけて話さないと。


「では、なぜあの者は自らを聖女だと? まさか公女の立場で民を騙し金品を要求するような愚かな真似をするとは思えません。しかも、大国の陛下の御前でこのように騒ぎ立てるとは……リコリス王国の品位を疑われてしまいます。一体何が目的ですか? お答えください。公女」


 おぉ……

 会場が静まり返ったね。

 ん?

 アカデミーのクラスメイト達の姿が遠くに見えるね。

 

「な……小国の王女の分際でこの大国リコリスの公女のわたしになんて口を! おじい様に頼んで牢獄に送ってやるわ?」


 お!

 いいね!

 いつも通りの公女だね。

 っていう事はやっぱり今の言動が悪い事だって理解できていないんだ。

 ……甘やかし過ぎたなんていう事じゃないんだ。

 周りの大人がこうなるように育てちゃったんだ。

 少しかわいそうにも思えてきたね。

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