偉い人に大切にされると周囲から嫉妬されそうで怖いよね
「兄ちゃん! 抱っこ!」
え?
ベリアル!?
自分から抱っこをおねだりするなんて……
どうしたの?
「……ヒヨコ様、光栄です」
お兄様?
ベリアルを抱っこしたままわたしの隣に座った?
お兄様の席は別にあるのに……
「えへへ。兄ちゃんの膝は気持ちいいな!」
ベリアル……
もしかして、わたしがお兄様の近くにいられるようにしてくれたの?
「ヒヨコ様の椅子代わりになれて光栄です」
お兄様……
近くで見たら顔色が良くないよ?
目の下にもクマが……
疲れているんだね。
今わたしにできるのは、こっそりお兄様の疲れを癒す事だけだね。
誰にも気づかれないようにお兄様に治癒の力を使おう。
「あ……」
気づいたみたいだね。
顔色が良くなったけど、きっと眠る暇がないんだね。
「(ルゥ、ごめんね。宰相にもしてもらえるかな?)」
お兄様?
宰相って確かベリアル吸いのプロだよね?
今、ここにいるの?
どこに……?
ん?
あれ?
お兄様の後ろに立っているね。
お兄様の手だと思っていたけど、さっきからベリアルのパンみたいな翼を握っている手って……
宰相だ!
おぉ……
宰相もかなり顔色が悪いね。
でも、口角がほんの少し上がっている……
ベリアルのかわいさに癒されているんだね。
分かる。
分かるよ。
ベリアルは超絶かわいいからね。
かわいそうだから、こっそり治癒の力を使おう。
どうかな?
うん。
顔色が良くなったね。
……おぉ。
宰相のベリアルの翼をニギニギする手が速くなった!?
すごい……
良く見ると……ベリアルの翼をマッサージしているんだ!
日頃の疲れをほぐされてベリアルも、うっとりしているよ。
この宰相……
ただ者じゃないね。
「ペリドット様……お隣よろしいですかな?」
え?
あれ?
マグノリア王?
「向こうに神殿が用意した席があるよ? わたしの隣でもいいのかな?」
「はい。こちらの方がヒヨコ様にもペリドット様にも近いので……」
「わたしとヒヨコちゃんに近い?」
「はい。ペリドット様とヒヨコ様は孫やひ孫のように思えて仕方ないのです。ところでペリドット様は国境についてどのようにお考えですかな?」
「マグノリア王……またいいように使おうとしているね……」
「ははは。ただの世間話です。他にも海域や生鮮食品の輸送についてもぜひお話ししたいですなぁ」
「……さすが大国の王様だね。流れるように訊いてくるよ」
マグノリア王は、今困っている問題を全部わたしに解決させようとしているみたいだね。
「あぁ……ヒヨコ様……次はわたしに抱っこされてみませんか? お菓子がありますよ?」
アルストロメリア王!?
いつの間にか、お兄様の隣に座っているね。
ベリアルの隣に座れてご機嫌だよ。
「アルストロメリア王の次はわたしに抱っこさせてください。わたしも今回はお菓子を持参しました。ほぉら、珍しいお菓子ですよ?」
アルストロメリア王の隣にはデッドネットル王が座っているよ。
ベリアルをお菓子で餌付けしようとしているね。
ベリアルは簡単に餌付けされちゃうからね……
……あぁ。
近くで見ている貴族達の視線が痛い。
四大国の王様と司教が、見た事の無い小娘を大切にしているように見えるだろうからね。