やっぱりお兄様は世界一のお兄様だよ
「ペリドット様……四大国の王達が……」
ん?
あぁ……
すごい数の護衛だね。
お兄様の姿が全然見えないよ。
「きやあああ! リコリス王素敵いぃぃー!」
「こっち向いてえ!」
「うおお! リコリス王! 万歳!」
……アイドルのファンみたいな声が聞こえてくるね。
この前は聞こえてこなかった野太い声も聞こえてきたよ。
確実にお兄様のファン層が広がっている……
「司教……お兄様っていつもこんな感じなの?」
「あぁ……応援団のような物ができているようですよ? 皆『ウチワ』という応援する道具を手に持ち叫んでいます」
「……うちわ?」
日本の……うちわ?
こんな事をこの世界の人間に教えるのは、吉田のおじいちゃん……だよね?
何の為に?
「ペリドット様は今は他国の王女様ですので一応頭を……」
司教の言う通りだね。
椅子に座っているのは失礼だよね。
「そうだね。教えてくれてありがとう」
「いえ。……ペリドット様はご立派ですね」
「え? わたしが?」
「お礼やお詫びをきちんとできる事は簡単なように見えて難しいのですよ?」
「……確かにそうかもしれないね。プライドが高い貴族なら……もっと難しいよね」
「はい。司教をしながら巡礼をしていると色々な無礼者に出会います。わたしも苦労したものです」
「司教の立場でも? 大変だね」
「口さえ開けば自分は大国の公女だ、大国の公爵だと……」
……ん?
どこかで聞いた話だね?
まさか、誘拐犯の孫……?
そんなはずないか。
どこの国にもそういう人間がいるのかもしれないね。
「司教はよく我慢したね」
「ふふふ。ガッポリ稼がせてもらう事を考えれば腹も立ちませんでしたよ?」
「なるほどね」
さすが、司教だね。
どれだけ稼いできたんだろうね。
かなり悪い顔をしているよ。
あ……
四大国の王様達が目の前を通り過ぎていくね。
頭を下げないと……
お兄様……
こんなに近くにいるのに……
話しかけられないなんて悲しいよ。
でも、わたしはお兄様の役に立つ為に頑張るから。
だから……
ん?
立ち止まった?
「落としましたよ?」
え?
わたし?
何も落としていないよ?
この声は……
お兄様……
「あ! オレの生キャラメル! ありがと、兄ちゃん!」
ベリアル!?
今はお兄様はリコリス王としてここにいるから、そんな話し方だと捕まるよ?
「神様の使い……様……」
……?
わたしの事?
ゆっくり顔を上げると……
お兄様が悲しそうな顔をしている……?
「っ……」
ダメだよ。
今顔を見たら……
泣いちゃうから……
……?
お兄様?
優しく微笑んでいる?
お兄様が自分の片耳のイヤリングに触れた?
ルゥとお兄様の母親の形見のイヤリング……
わたしもつけているよ?
わたしも左耳につけているイヤリングを触ると、お兄様が小さく頷く。
その姿に心が温かくなるのを感じる。
大切な双子の妹のルゥの身体を勝手に使っていたのに……
ペルセポネの身体に戻った今でも、まだ妹だと思ってくれているんだ。




