ベリアルは知らず知らずのうちに商品の宣伝をしている
「お待たせいたしました。……これは、なんと! ヒヨコ様はこの世の全てのかわいいものの頂点に君臨しておられるようですな!」
司教……
全く、その通りだね。
かわいいボンネットとレースの日傘に気づくなんて……
お目が高いっ!
ゆっくりと、司教と護衛の神官達と一緒にお披露目会場の広場の最前列に歩いていく。
「ん? 良く分からないけど褒めてるのか?」
ぐふふ。
司教はベリアルにメロメロだね。
しかも、ベリアルが首を傾げながら褒め言葉か確認しているよ?
くぅぅ!
超絶かわいいっ!
「はい! 最高にかわいいです!」
「そうか。司教もかわいいぞ?」
近くにいる人間達が話すヒヨコちゃんに驚いているね。
「ええ!? なんというありがたいお言葉! あぁ……あのヒヨコ様、ペリドット様。大切なお話が……」
「ん? なんだ?」
「あの……子供達の為に絵本を描いたのですが、その物語にお二方を登場させてしまい。事後報告となり申し訳ございません」
「え? わたしとヒヨコちゃんを?」
「別にいいんじゃないか?」
……ベリアルはいいのか。
でも、やっぱり心配だよね。
かなり美化されていそうだよ。
「あぁ……ヒヨコ様……ありがとうございます。一応内容の確認を……」
司教が絵本を手渡してくれたけど……
「あぁ……うん」
でも、今さら描き直しなんて間に合わないよね。
司教なら変な事は描かないとは思うけど。
「ささ、こちらがお二方の席となります。ヒヨコ様はわたしの膝に……ペリドット様は絵本の確認をお願いいたします」
「うん! 司教にお土産だぞ? ほら、生キャラメルだ!」
あぁ……
ベリアルが司教の膝に……
ずっと抱っこしていたかったのに……
残念。
「このわたしに!? なんとありがたい。では早速……おお、これは……初めての舌触り……甘くて……もう舌の上で消えてしまいました」
「えへへ。近いうちに販売されるらしいからな。そしたらまた食べられるからな?」
「おお……それは楽しみですなぁ」
……ベリアルは知らず知らずにしっかり生キャラメルの宣伝をしているね。
今頃第三地区から水晶で見ているベリス王は笑いが止まらないだろうね。
近くで見ている人間達が、話すヒヨコちゃんに驚きながらも生キャラメルに興味を持ったみたいだ。
「ヒヨコが話しているわ?」
「魔物かしら?」
「だが司教様が抱いておられるぞ? まさか、神様の使いなのでは?」
「きっとそうに違いない」
「あのかわいらしい小さな棒は何かしら? レースがたくさんついているわね?」
「あの帽子もなんともかわいいわ?」
最前列にいるのは貴族達みたいだね。
ベリアルに興味津々だ。
「おい! お前達に良い事を教えてやろう。この帽子はボンネットっていう女性の被り物だ。このレースの傘はただのおしゃれだ!」
ベリアル……
偉そうで超絶かわいいよ!
ぐふふ。
って、いけない!
しっかりしないと!
とりあえず絵本を確認して気持ちを落ち着かせよう。
どれどれ?
おぉ……
あの短時間で、すごく素敵な絵だね。
タイトルは……
『救世主様とヒヨコ様と麗しの姫』
……!?
麗しの姫ってもしかしてわたし!?
恥ずかしくて耐えられないんだけど!?
「あの……司教? このタイトルは……変えられな……」
「変えません!」
「え? でも……麗しの……とか恥ずかし……」
「変えません!」
食いぎみに全否定!?
さっき、ダメなところは描き直すみたいな事を言っていなかった?
直さないなら確認なんていらないよね?
中身は……あぁ、見るのが怖いよ。