全ての問題を四大国の王だけで解決するなんて難しいよね
「……えっと……皆、何か話でもあるのかな?」
「あぁ……あの……」
「それが……」
「聖女様……実は……」
ん?
王様達の言葉が重なっちゃったね。
「「「……」」」
また黙っちゃったよ。
「何か話しにくい事?」
「あぁ……あの……わたしから話しましょう……実は……」
マグノリア王から話してくれるんだね。
でも話しにくそうだね。
「うん。何かな?」
「魔素が祓われ平和が訪れた……そう思っていました。ですが……実際は問題だらけでしてなぁ」
「うん。そうみたいだね」
アカデミーのマリーちゃんとジャックもかなり困っていたからね。
「一番の問題は土に栄養が無い事なのです」
「土に栄養が……うーん。あとは水……かな?」
「さすがは聖女様です。魔素が祓われ光が差し込むようになり、これで作物を育てる事ができると喜んでいたのですが……作物が育たなかったのは魔素のせいだけではなかったようですなぁ」
「魔素が祓われてみて初めて気づいたっていう事だね」
「はい。全てを魔素のせいにしていた事が恥ずかしいです」
「……うーん。でも、今作物が育っている国もあるんだよね? その国からしてみれば、いきなり元聖女が現れてこの世界全ての土を良い状態にしたら……どうなんだろう?」
「はい。問題はそこです。作物が育つ土地の者達は豊かな大地にする為に苦労してきたのです。今になって全ての国の土地が豊かになったら、その者達の苦労が意味の無い事になってしまいます」
「そうだよね……四大国の王様達で話し合ったんだよね? 答えはでなかったっていう事かな?」
「はい……誰かを助けようとすると誰かの今までの苦労を台無しにしてしまう。難しいところですなぁ」
「……とりあえず、生死に関わりそうな国から助けていくつもりかな?」
「はい。そのつもりではいるのですが……それもなかなか難しく……」
「お兄様はなんて?」
「リコリス王は全ての国の現状を事細かに調べ国同士の均衡を崩さぬように慎重に進めねばならないと……ですが、それには全ての国を巡らねばなりません。それに、大国の調査官には話しにくい事もあるかと。小国同士の揉め事に大国が介入する事を望まぬ国もあるはずです」
「……四大国の犬の出番かな?」
「え? 四大国の犬……とは?」
「うん。神殿だよ? 今日付けで四大国の犬になったの。司教もそれで良いって言っていたよ?」
「ええ!? あの司教が……ですか?」
「うん。今まで偽の神聖物で詐欺みたいな事をしてきたお詫びにってね。詳しい事はアルストロメリア王に話してあるからお兄様がいる時に皆に話してもらえるかな?」
「はい。聖女様。お任せください。それにしても……さすがは双子ですね。リコリス王は聖女様と同じ考え方をしていました」
ん?
アルストロメリア王?
同じ考えってなんだろう?
「それって……?」
「先程、聖女様はアルストロメリアで『今だけを見るのではなく長期的に支援が必要だ』と仰られましたが……リコリス王も同じお考えでした」
「お兄様も……そうなんだね」
「ですが、今すぐに支援が必要な国があるのも事実です」
「……さっきも言ったけど、それぞれの国の特技を伸ばしてあげればいいんじゃないかな? 作物を育てるのが得意な国もあれば宝石の加工が得意な国もあるでしょ? 例えばだけど、宝石の加工職人は手先が器用だから手が空いた時に農機具を作ってみるとか。それと引き換えに食べ物を分けてもらうとかね」
「……聖女様は最近リコリス王にお会いに?」
マグノリア王?
真剣な顔だね。




