罪の重さを思い知れ(2)
「天界は、たるみきっているようだな。神よ、中流以上の天族全員に鍛錬が必要なようだが?」
ハデス……
顔が怖いよ。
ハデスは、弱い上に威張り散らして鍛錬をしない人が嫌いなんだよね。
複雑な環境で育ったからかな?
確かにハデスの周りには強い人しかいないよね。
……いや、ハデスが強くしたのかも。
「(え? それってお父様も入ってるの? 神だけど?)」
お父様……
確実に入っているよ。
「どうか、お赦しください!」
「こんな理不尽な事が許されるのですか?」
……理不尽?
赦せ?
自分達がベリアルにしてきた事だって理不尽な事でしょ?
……?
何?
何か聞こえてくる?
声?
(……こんな時にあいつがいたら、代わりにやらせられたのに)
「おい! 黙れ! 何を言ってるんだ!?」
「え? 何がだ?」
「お前、今あいつの事……あ、いや……」
……?
心の声が聞こえたっていう事?
わたしだけじゃない。
皆に聞こえていたみたい。
まさか、おじい様?
(あの事がばれたらこんなもんじゃ済まないぞ!?)
「おい! お前……何を言ってるんだ?」
「は!? 口を滑らせてるのはお前だろう!?」
自滅したね。
おじい様は常に他人の醜い心が聞こえてくるのか。
辛いだろうな。
「(早く解決しないとハデスに鍛錬されちゃうよ)お前達、何の話をしているのだ?」
おぉ!
お父様がやる気になっているよ。
鍛錬が嫌なんだね。
「え? それは……あの……」
「なにがなにやら……」
「数千年前、我が兄ハデスの側付きだった男がいた。だが無実の罪で大天使により追放された。お前達はその者を知っているか?」
「……さぁ、分かりません」
「わたしも知りません。昔の事過ぎて……」
「……そうか。その男を追放した大天使は先代の神により消滅させられた。だが、その一味がまだ生きているとなれば……それは問題ではないか?」
「まさか! 我々がその一味だと?」
「そんな事は絶対にあり得ません! 我らは常に実直に生きています」
「……然るお方からこの件についての調査を依頼されている」
「然るお方?」
「どなたですか?」
「お前達ごときの口からは、その名を呼んですらいけないお方だ」
「わたし達は無実です」
「本当に何も知りません」
「……」
あぁ……
お父様が黙っちゃった。
これが限界かな?
あとは、わたしが……
「……誰かを苦しめて、自分だけはいい思いをしながら生きて、私腹を肥やしている……それは本当の幸せなのだろうか?」
お父様?
「その先に幸せがあると信じて悪事に手を染めながら……毎日心から血を流し、生きている者がいるとしたら……それはどんな気持ちだろうか」
……ベリアルの事?
それとも、群馬でわたしの身体を作る為に自分がしてきた時の事?
「お前達には罪を償うという意味が分かるか?」
「そのくらいは分かります」
「罰を受けるという事です」
「……心から反省するという事だ!」
お父様……
そうだよ。
お父様は真剣に、心から第三地区の皆に謝ったんだ。
本当に申し訳ないと思いながら、ただわたしの身体を作る為に……
こんなに優しいお父様に、わたしは……
わたしのせいで酷い事をさせちゃったんだ。