表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

237/1484

誰かに『頑張ったね』って言われたら心が温かくなるよね

 でも……確か、前におじいちゃんが王様に『オレは普通の人間じゃない』って言っていたよね?

 じゃあ……『すごく長生きの人』って王様に話してもいいんじゃないかな?

 うーん。

 余計な事を言わない方がいいかな?

 

「王様、残念に思う事はないよ? わたしにはおじいちゃんが救世主かどうかは分からないけど、もしどこかで本物の救世主が見ていたとしたら、過去に自分が助けた人間達の子孫が今でもその話を語り継いでくれている事を喜んでいるんじゃないかな?」


「聖女様……」

 

 王様が悲しそうな顔をしているね。

 

「それにアルストロメリアの旗に描いてあるのは『頭が三つある犬にまたがった人間』だよね? なかなかそんな……頭が三つある犬なんていないしその犬にまたがれる人間もいないはずだよ? もしかしたら、本人かもしれないし、子孫かもしれないよ?」


 実際はわたしの腹違いのお兄さんと冥界のケルベロスなんだけどね。


「子孫……確かに……では救世主様の子孫が、過去に救った国が正しい道に進んでいるかを確認しに!? なんという事だ! わたしは立派な王に見えたでしょうか!?」


 アルストロメリア王は、かわいいね。

 褒められたくて頑張っている子みたいだよ。


「さっきも言ったけど、アルストロメリアの民は笑顔だったよ? 王様が素敵だから笑顔でいられるんだよ」


「素敵な……王様……それは……わたし?」


「そうだよ? きっと救世主も今のアルストロメリアを見たら喜んでくれるはずだよ? 民が笑える素敵な国を助けられて良かったって。『己の私利私欲に走らない、民を思いやれる立派な王様』だから皆が笑って暮らせているんだよ?」


「聖女様……わたしは……頑張ってきて良かったです。王だから頑張るのが当たり前で……民を導く為に夜も寝ずに政務に励んで……もう家族もいなくて、誰かに褒められた事などなくて。まるで……幼かった頃、母上に褒められた時のように嬉しいです」


「これからは、王妃様を迎えて家族ができるんだよ? 今まで寂しかった分、きっと毎日が楽しくて幸せなはずだよ? 王様が王妃様と仲良く過ごす姿を見れば民は今よりももっともっと幸せに笑うはずだよ?」


「……民が?」


「そうだよ? 大好きな王様が幸せそうに笑っていれば民も嬉しくて笑っちゃうでしょ?」


「……はは。あははは! はい。わたしも民が笑っている姿を見ると幸せな気持ちになります。民も同じなのですね。これからは、わたし自身も幸せな姿を見てもらえるように励みます」


 王様がホッとしたような嬉しそうな笑顔になったね。

『王』は常に孤独なのかな?

 前の世界の絵本の中の王様は、幸せそうに見えたよね。

 良い物を着て、食べて、立派な王宮に住めて……

 でも実際は孤独で、責任の重さに押し潰されそうなんじゃないかな?

 ただ、民の為に必死に頑張ってきてもそれは王だから当たり前だって思われて……

 たった一言『良く頑張ったね』って言っただけでこんなに喜んでもらえるなんて……

 これからは、王様が自分自身の幸せに笑える日が来るといいね。

 ……きっと来るよね。

 王様は素敵な人間だから。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ