残念だけど水神様は実在しないんだよ
「違うよ? 救世主はリコリスアカデミーの先生だったの。でも、精霊から好かれていてね? 神殿の属性検査は水晶に入っていた神力をご褒美にもらう代わりに精霊が手助けしてくれていたの。でも、もう水晶には神力が残っていなくて、精霊がいたずらして違う属性を教えていたみたいなの」
「なんと……精霊がいたずらを?」
王様は精霊の存在を信じてくれるかな?
「でも、先生は精霊に好かれていてね? 先生が神殿にいれば精霊が正確な属性検査をしてくれる事になったの。先生から精霊にお菓子をあげて踊りを見せる約束でね?」
「……? お菓子は捧げ物として……踊りとは?」
「先生は精霊に喜ばれる踊りの達人なの。だから神殿の若い世代にその踊りを伝えていく事にもなったの」
「なるほど。神殿は神力を失っても属性検査は正確にする事ができる。神殿しか属性検査はできないので神殿自体は力を失わない……という事ですね?」
「うん。そして、その神殿の上に立つのが……四大国の王っていう事なんだけど、どうかな?」
「四大国の王以外はその事実を知らない……という事ですね?」
「うん。神殿は民の心の拠り所だからね。なくなったら困るでしょ? 小国の王様達の場合は、なんとか頑張ってお金をかき集めて寄附したのに偽物の神聖物だったって知ったら怒りが収まらないでしょう? 神殿は寄付金で成り立っているから、偽物を押しつけられなくなって収入がなくなるんだけど……属性検査を有料にするのはどうかと思うの。その時、小国は無理の無い程度に寄付をするようにして欲しいんだ。魔素がなくなった後にも色々問題があるみたいで……」
「あぁ……川を塞き止めたり、肥料を高値で売りつけたり……色々あるようですね。今、四大国の王達で話し合っているところです」
「え? そうなの!?」
じゃあ、わたしが何かしたらややこしくなっちゃうかもしれないね。
うーん。
「聖女様?」
「あぁ……うん。いつくらいから小国の揉め事を解決し始めるのかな?」
「そうですね……実際支援が始まるまでに半月はかかるのではないでしょうか」
「半月か……干からびちゃうね……」
「え?」
「あぁ……うん。いや……」
「……干からびる? あぁ……あの件に巻き込まれてしまいましたか」
あの件?
王様はマリーちゃんとジャックの国の揉め事をどこまで知っているのかな。
「あのさ……わたしに協力できる事はあるかな?」
「聖女様?」
「もう気づいているんだよね? 実は……水を塞き止められた国の子に頼まれたの」
「頼まれた……ですか?」
「うん……」
「その国を助けるのですか?」
「ん……少し違うかな?」
「違うのですか?」
「うん。雨が降らない土地に水を降らせる事は簡単だよ? その子達はわたしが水の力を使える事を知っているの。でもね? わたしに水を降らせて欲しいとは言わなかったの」
「……? それでは何を頼まれたのですか?」
「国に伝わる水神様と話をして欲しいって言われたの。水神様と話ができる人間を捜していたんだって。でも……たぶん水神様は想像上の神様だと思うの」
マリーちゃんとジャックは、水神様を『水の力を持つドラゴン』だと思っていたみたいなんだよね。
でも、実際に水の力を持ったドラゴンが人間の為に力を貸していたとは思えないんだ。
人間はドラゴンにとって食糧でしかないから。