辻褄が合うように嘘をつき続ける神様の娘
「ぺるみはまだ腰が抜けてるのか? だいたいどうして腰が抜けたんだよ?」
うぅ……
ベリアルの言う通りだよ。
「それは……だって……ヒヨコちゃんがおばあちゃん孝行の超絶かわいいヒヨコちゃんだって分かったから……」
「はぁ!? なんでそんなので腰を抜かすんだよ!?」
「だって……超絶かわいくて骨抜きにされたんだもん」
「……お前……本物の変態だな」
このままじゃ、王様達に『変態』じゃなくて『ど変態』だっていう事までばれちゃうよ!
「うぅ……もう……立てるもん! ほら! 立てたよ!」
良かった。
普通に立ち上がれたね。
「あぁ……聖女様、もう大丈夫ですか?」
王様がオロオロしているね。
「心配してくれてありがとう。それから、今は『黄金の国ニホンの王女』っていう設定なの」
「設定……ですか?」
「うん。わたしは今まで通り魔族と暮らしているの。でも、それだと怖がる人間もいるはずだよ? 魔族は優しいけど人間を食べるのは事実だし。だから、王女の身体に神様が生まれ変わらせてくれたっていう設定にしたの。もちろん『黄金の国ニホン』なんて存在しないよ?」
「聖女様は、リコリス王が心配なのですね?」
「うん。お兄様には、もらってばかりで何も返せていなくて……だから……今こそ恩返しの時なんだよ」
「ですが……どうやって今のお身体に? それに『神様』の名を使っても大丈夫なのですか?」
「あぁ……心配してくれてありがとう。本当に神様には会ったんだよ? 実は、ヒヨコちゃんはわたしがルゥだった時に神様から与えられた聖獣だったの。ルゥが亡くなると『浄化をする為に申し訳なかった』って言って神様が今の身体を授けてくれたの。どこかの人間の身体ではないみたいだよ? 創った身体とか? よく分からないけど……」
嘘をついてごめんね。
でも、わたしが神様の娘だなんて話せないから……
「なるほど……ヒヨコ様は魔族ではなく聖獣様だったのですね?」
「うん。ヒヨコちゃんが空間移動する時に光るのは神様の力を使っているからなんだって。ヒヨコちゃんは神様がかわいがっているペットだったみたい」
「神様が……実在していたとは……」
「目に見えないからね。信仰の対象ではあっても実在するかって言われれば……ていう事だよね。神聖物も……偽物だった事はもう分かっているんでしょう? だから、余計に実在するか疑っちゃうよね」
「偽物だった事は何代も前の王の時から分かっていました。ですが……寄付金を渋ったと言われたらこの大国アルストロメリアの恥になりますので……」
「あははは! アルストロメリア公爵も同じ事を言っていたよ? さすがは親戚だね。でも……お兄様は『偽物なのに寄付する必要はないから自分の代からは寄付はしない』って言ったみたいで……『民の為にそのお金を使いたい』って言ったらしいの」
「なるほど……あの若き王が……だから聖女様は偽の神聖物だという事実を神殿に認めさせる為に動いているのですね?」
「あ……それがね? さっき偽物だって神殿が認めたの」
「え? あのずる賢い神殿が……ですか?」
アルストロメリア王も神殿がずる賢いって思っていたんだね。
王様は神殿を赦してくれるかな?