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本当に好きなら外見なんて気にならないはずだよ?

「陛下! お帽子が……って、え? 陛下、御髪おぐしが! なんと! 陛下ぁぁ! 万歳! ばんざーい!」


 ん?

 さっき『帽子が』って言いながら走って来た人間かな?

 厨房に入ってくるなり騒ぎだしたね。


「え? 本当だ!」

「どうして?」

「陛下! 良かったです。本当に良かったです!」


 うーん。

 従者の皆は、かなり気を使っていたみたいだね。

 帽子を被っていない時は頭頂部を見ないようにしていたんだ。


「髪が……髪が……うぅ……ありがとうございます。ありがとうございます」


 王様が泣き始めたね。

 アルストロメリア王だから、元アルストロメリアの王子である公爵とは親戚なのかな?

 良くしてあげないとだよね。


「あのね? 王冠を調べてみて、違う素材で作り直してみたらどうかな? もしよければ、そういうのに詳しい知り合いがいるんだけど」


 ドワーフのおじいちゃんなら詳しいよね。

 

「え? 紹介していただけるのですか?」


「うーん。次に会う時にお願いしてみるよ。まだ先になるかもしれないけど。でも人間じゃないけど平気かな? あ、魔族でもないよ?」


「なんと……ありがたい……ありがとうございます。これからはもう帽子を被らなくて済むのか……あぁ……ありがたい」


 王様はずっと気にしていたんだね。

 

「辛かったんだね。もう泣かないで?」


「うぅ……これでようやく王妃を迎えられます……ぐすっ」


「え? どういう事?」


 なんで王妃?

 独身だったのか……

 王様は早く結婚するものだと思っていたよ。


「ずっと、頭頂部が気になっていて……昼は帽子で隠せても夜にその部分を見られる事が怖くて……」


「それで独身だったの!?」


「はい。ぐすっ」


「そんなの……好きな相手だったら全然気にならないんじゃないかな? そんなのを気にするなら本気で王様を好きじゃないっていう事だよ?」


 ヴォジャノーイ族だった頃のハデスだって髪が生えていなかったけどすごくかっこ良かったし。


「聖女様……ありがとうございます。これからは、全力でお妃選びができます……ぐすっ」


 そこまで思い詰めていたなんて。

 あれ?

 もしかして、アルストロメリアの後継者問題を解決したのかも?

 いや、待てよ?

 次期王の座を狙う人間からしてみれば余計な事をしたんじゃないかな?


「えっと……王様の他に……王族って……」


「え? あぁ……いないのです。リコリス王国にアルストロメリア公爵がいるだけで……ですが『何があろうと公爵だけは傷つけるな』という先々代のお言葉がありまして。王の座は傷つく事ばかりですので……巻き込めません」


 先々代のお言葉?

 公爵のお兄さんかな?


「そうだったんだね」


「わたしは……子供が好きなので、たくさん子を授かりたいのです。と言っても側室を迎えるつもりはありません。王妃と側室の争いは……見たくないのです」


 うーん。

 何かあったんだろうね。


「そうなんだね。きっと王様を心から大切に想ってくれる素敵な王妃様が見つかるよ」


 王様はかわいいし、すぐに見つかるはずだよ?


「はい……ありがとうございます」


「……なぁ、王様? このクッキー食べてもいいか? オレ良い子で待ってたぞ?」


 え?

 ベリアル!?

 なんてかわいいの!?

 バスケットから王様をつぶらな瞳で見つめているよ!?


「これは……ヒヨコ様……もちろんです。全てヒヨコ様と聖女様のお菓子です」


「え? そうなのか? やったぁ!」


 王様がクッキーをひとつベリアルのくちばしの前に差し出すとモグモグ食べ始める。

 ん?

 王様が震えている?


「なんと……この世の全ての『かわいい』を詰め込んだような愛らしさっ!」


 王様!?

 さすが大国の王様だね。

 まさにその通りだよ。

 ここにも同志がいたね。

 ぐふふ。

 全種族ベリアルアイドル化計画を水面下で進める時がきたんだね。

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