表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

220/1484

公爵は狡猾なだけではなく優しい人間だと気づく

「公爵……鏡……見た?」


 半日で別人みたいに若返っているよ!?


「はい。嬉しくて、ずっと鏡を見ていました」


 なるほど。

 自覚はあるみたいだね。

 すごく嬉しそうだね。

 顔色も良いし、体内の毒に薬が効いているみたいだね。

 でも、そんなにすぐに効くものなの?


「薬が強過ぎる事は無いはずだけど……パパは薬草に詳しいの」


「パパ……とは魔族の……でしょうか?」


「うん。すごく優しいんだよ? 薬を飲んでくれたんだね。嬉しいよ」


「ペリドット様のご家族です。信じないはずがありません」


「公爵……ありがとう」


「こちらこそありがとうございます」


 ふふ。

 初めての公爵とのティータイムは腹の探り合いだったけど、今は仲良くなれた気がするね。


「公爵は……毒を……その……」


 なんて言ったらいいのかな?

『毒を盛られていたの? 』なんて訊けないよね。


「ペリドット様の想像通りです。わたしは幼い頃から毒を飲まされていました。カサブランカのおかげでそれに気づく事ができたのです」


「おばあ様のおかげで?」


「はい。ですが、薬を服用しても体内から完全に毒が消える事は無く……常に身体が重かったのですが、お父上の薬を飲んでからは今までが嘘のように身体が軽いのです」


「顔色も良いし安心したよ。でも、もうしばらく飲み続けてね?」


「はい。お父上にお礼をしたいのですが……」


「ふふ。わたしからすごく喜んでいたって伝えておくね」


「……見返りを求めないのですね」


「え? 見返り?」


「はい。人間は……特に貴族は常に見返りを求めます。ですが……ペリドット様もご家族も決して見返りを求めない……」


「……今わたしが暮らしている家族は、皆穏やかに仲良く暮らしているの。身分とかも関係なく……足の引っ張り合いも、傷つけ合う事も無いし。皆で助け合いながら暮らしているの」


「楽園のような所なのですね」


「そうだね。すごく大切な場所で……皆の事が心から大好きなの」


「ペリドット様……幸せなのですね」


「うん。すごく……すごーく幸せだよ」


「ペリドット様は……このアカデミーの騒動が落ち着いたら……もう人には……関わらない方が……」


「……うん。わたしも、そう思っているよ? 今回の事件に関わったのは、お兄様への恩返しなの。大勢の前に姿を現すのはこれが最後だよ」


「……ペリドット様を『人の世界』の醜い争いに巻き込みたくないのです。まるで……どこまでも透き通る色の無い海のようなペリドット様を……醜い人の色に染めたくないのです」


「公爵……ありがとう。あの時、女神様が公爵を選んだのは公爵が優しいからなんだね」


 お母様も公爵が優しいから選んだって言っていたよね。

 公爵は狡猾なところもあるけど、それはアルストロメリアからリコリスに来て、生き延びる為にそうなるしかなかったからなのかもしれないね。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ