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誘拐犯の孫は自分中心に世界が回っていると思っているみたいだね

「あら? 何をしているの?」


 おぉ……

 急にクラスルームが静かになったね。

 誘拐犯の孫が帰ってきたからか。

 どれだけ嫌われているんだろうね。


「……」


 誰も話さないね。

 怖くて口をきけないとか?


「何よ。わたしには話せないの!?」


 うわあ……

 顔に出やすいんだね。

 怒っているのがすぐに分かるよ。

 でも公爵令嬢っていう事は王族の血を引いているんだよね?

 こんな感じでいいのかな?

 皆のお手本にならないといけないんじゃない?


「何なのよ!? このクラスで一番偉いのはわたしよ?」


 ……なるほど。

 皆から嫌われるわけだよ。

 こんなんじゃ、皆に愛想を尽かされちゃうよ?

 気づいたらひとりぼっちなんて寂しいよ?


「(違うだろ。今はペリドット様が一番偉いんだ)」

「(そうだよな)」

「(貴族なら序列は守らないと)」


 おぉ……

 皆も我慢の限界だったんだね。


「……何なの? 今ふざけた口をきいたのは誰? わたしの前に来なさいよ! 身体で教えてあげるわ?」


 身体で教える?

 まさか殴るっていう事?


「……」


 皆黙っちゃったね。

 毎日こんな感じなのかな?

 最悪だよ。


「公女は……何か誤解をしているようですね。序列で言えばわたくしが頂点のはずですが?」


 仕方ないね。

 わたしが世間の厳しさを教えてあげないとね。

 世の中にはいくらでも上の立場の人間がいるって。


「は!? なんて愚かなの!? わたしは王妃になるの! このリコリスの未来の王妃なのよ!?」


「……もう内定していると?」


「そうよ! おじい様もお父様もいつもそう言っているわ?」


「……では、正式に国を通して確認しましょう。リコリス王妃が内定したのかを」


「いいわよ? 忘れないで? わたしは聖女で未来の王妃なの」


「ふっ……」


「何よ!? 今笑ったわね?」


「はい。笑いましたよ? あまりに浅はかで幼稚で……今までは家門の力で守られてきたでしょうが、それが王族にも通用すると?」


「わたしは聖女で未来の王妃なのよ!? 通用するに決まっているでしょう!?」


「公女は『王妃』とは何だと思いますか?」


「毎日豪華な暮らしをして、美しい陛下と共に幸せに暮らせる栄誉ある立場よ!」


「ふふ……なんとも……『あれ』ですねぇ。絵本の中のお姫様のようですね」


「そうよ! わたしは大国リコリスの唯一のお姫様になるのよ!」


 王妃はお姫様じゃないけどね。


「聖女とは? 神殿に検査を依頼したのですか?」


 司教が最後の神力を持つ人間なんだよ?

 お兄様以外でね?

 神殿がそんな検査をするはずがないよ。


「おじい様が毎日言っているもの!」


「はあ……そうですか。まぁ夕方になれば全て幻想だと分かるでしょう。一度口から出た言葉には責任を持たねばなりません。それを痛感する事になるでしょう。その時が来て他人にあたる事がありませんように。権力者であれば下の者に威張っても良いというわけではありませんよ?」


「小国の王女の分際で、未来の王妃のわたしになんて口を……」


「きっと産まれた時から甘やかされ、間違えを正された事が無いのでしょう。もしくは……言っても無駄だからと放っておかれているのでは?」


「はあ!? わたしは偉いの! だから、何をしても赦されるのよ!」


「クラスメイトを殴っても? 罵声を浴びせても?」


「そうよ。わたしは選ばれた人間なの! お前達みたいなクズとは違うのよ!」


 救いようがないとはこの事だね。

 聞いていて心が痛いよ。

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