四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦? 早口言葉みたいだね
ベリアルを抱っこしている学長と外に出ると、集まっている人間達が騒いでいる。
「さっきの治癒はわたしがやったの。今日はドラゴンが現れて属性検査が延期になったけど、明日わたしに『聖女』の検査結果がでるはずよ?」
ん?
誰かな?
女の子が、自分を聖女だって言っているね。
「わたしは聖女よ! そして、わたしがリコリス王妃になるの!」
おぉ……
令嬢誘拐犯の孫だったんだね。
うわぁ……
大丈夫かな?
今日の夕方の救世主のお披露目の時に司教が最後の神力を持つ人間だって公表するんだよね?
もう聖女もいないし、これからも現れないって話すのに……
明日の朝、恥ずかしくて登校できないだろうね。
……ちょっと、おもしろいかも。
「おい! あんな好き勝手言わせておいていいのか? 聖女は自分だって言えよ!」
おぉ!
怒るヒヨコちゃんも激かわだね!
「いいんだよ? 今日の夕方にはあの公女が嘘つきだって皆が知る事になるからね。今わたしが『わたしも聖女だよ』なんて言ったら、今日の夕方には嘘つき二人組になっちゃうよ?」
「うう……夕方までの我慢か。でも悔しいよ! ぺるみが皆を治したのに」
「ヒヨコちゃんは優しいね。ありがとう。ヒヨコちゃんと学長が知っていてくれれば構わないよ。大切な人が認めてくれれば、多少嫌な事があっても頑張れるでしょ?」
「……うん。早く夕方になってあいつが嘘つきだって皆に軽蔑されて欲しいよ」
「ありがとう。でもね? おもしろいと思わない? 今、自分が聖女だって言えば言うほど、あとになって大恥をかくんだよ?」
「え? 確かにそうだな。じゃあ、今はおもしろがって見ていればいいんだな?」
「ふふ。そうだよ」
「……ペリドット様、申し訳ございません。我がアカデミーの学生がこのような無礼を」
学長が申し訳無さそうにしているね。
学長のせいじゃないのに。
「大丈夫だよ? 世間知らずの貴族なんでしょ? 気にしないで? それより、属性検査は明日に延期になったの?」
「はい。先程、少し神官と話をしたのですが、そのようですね。それで……お願いがあるのですが」
ん?
また?
何かな?
「えっと……難しい事じゃなければ」
「明日の属性検査は、またリコリス城の訓練所で行われるのですが、それに参加していただけませんか?」
「え? でも水晶を破壊しちゃうらしいし。やめた方がいいと思うの」
「はい。わたしは考えました。どうしたらリコリス王国アカデミーに人材が集まるかを。そして、思いついたのです。『四大国アカデミー魔術科対抗魔術戦』まではまだ日にちがあります。明日の属性検査で『今まで見た事もないような魔術を使う少女がいる』と知れ渡れば他国の魔術科から大勢の学生が転入してくるはずです。そうすれば『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』までに大勢の学生がこのリコリス王国アカデミーに……」
うーん。
学長はよほどその魔術戦で勝ちたいみたいだね。
まぁ、水晶に触れずに軽く魔術を使えば大丈夫かな?
(ははは! わたしに任せろ! 軽ーく魔術を使って人間を驚かせてやろう)
うわぁ……
絶対にポセイドンだけには頼まないよ。
(お前! まだぺるみの中にいたのか! 気味が悪い! 早く出ていけ!)
(わたしよ! わたしがやるわ!)
(何を言う! わたしがやるのだ。なぁ、ぺるみ)
(黙れ! わたしがやるからお前達は指をくわえて見ていろ!)
(ぺるみが頼っているのはこのわたしだ!)
(愚かな事を! わたしが一番にぺるみに呼ばれたのだ)
(……オレも……呼ばれた……)
ん?
闇の上位精霊のシェイドも発言したね。
勇気を出せて偉いよ。
でも、誰か一人に頼んだら揉めそうな事だけは確かだね。
どうしたものか……




