さらに大変な事に巻き込まれていきそうな予感がする
「じゃあ、わたしはアカデミーに戻るね? 学長は一緒に戻る? 先生はここに残るのかな?」
さすがに初日から早退なんてダメだよね?
今日は色々と予定が変わったから……
とりあえず、ドラゴンの迎えはいらないよね?
アカデミー終了後に王様達をベリアルと迎えに行って、先生を救世主として民の前でお披露目して、それが終わったら市場に行って。
あ、公爵の邸宅にも行かないと。
夜になったらマリーちゃんとジャックの国に行くんだよね。
今日は徹夜になるかもね……
「いえ、荷物を持ち帰りませんとっ! わたしも一緒に連れて行ってくださいっ!」
先生は救世主になっても変わらず良い人間だね。
だから精霊にも好かれるんだろうね。
「では救世主様は我らの馬車でアカデミーに向かいませんか? いろいろと話しておきたい事もありますし」
司教は何があっても先生を手離さないつもりだね。
先生は憧れていた神殿に行けるから嬉しくて堪らないみたいだし……
下位精霊達も先生にぴったりくっついているし。
まあ、良かったのかな?
「じゃあ、わたしと学長はヒヨコちゃんの空間移動で帰るね?」
こうして、アカデミーの学長室に到着すると、ドラゴンが来ていた広場から賑やかな声が聞こえてくる。
……?
なんだろう?
学長室の窓を開けると大勢の学生と先生達が集まっている。
さっきまでドラゴンがいたからかな?
「なんでしょうか? 講師達まで集まっていますね?」
「そうみたいだね。わたし達も行ってみようか?」
高齢の学長に合わせてゆっくり外に繋がる廊下を歩く。
「ペリドット様は、属性検査は受けないのですか?」
「え? あぁ……今も上位精霊達がここにいるんだけどね? わたしが検査したら水晶を破壊しちゃうらしいの」
「なんと……はっ! ペリドット様は、四大国にそれぞれアカデミーが一校ずつある事をご存知ですか? 毎年、四大国の魔術科がアカデミー対抗の魔術戦を行うのですが。ぜひ参加していただけませんか?」
「え? 魔術戦? 何それ?」
「はい! 我がリコリス王国アカデミーは先々代の陛下までは最下位になった事が無かったのですが。先代の陛下はアカデミーに興味が無かったようで、運営費用は減らされる一方でして……他国のアカデミーに優秀な魔術科の学生を奪われ続けていたのです」
「……先代の王様はダメダメだったんだね」
困った王様だね。
その後始末をお兄様がやらされているのか。
「新王になり、リコリス王国はまた光の道を歩み始めました。きっとこれからは他国に優秀な人材が引き抜かれる事も無くなるでしょう」
「光の道……か。そうだね。お兄様の助けになるのならお手伝いさせてもらうよ。でも、勝敗はどうやって決めるの? どっちかが死ぬまでやるのかな?」
「……え?」
ん?
違うのかな?
「えっと……どうやったら勝ちになるの?」
「あの……場外に落とすか、棄権すれば終了になります。あの……生きたまま終わりにしていただきたいのですが」
「あ……あはは……そうだよね。ごめんごめん。本物の戦じゃないんだよね」
またやっちゃった。
気をつけないと。
魔族と暮らした時間が長いから、勝負って聞くとつい命を奪うってなっちゃうんだよね。