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司教は四大国の王様達が本当はどんな人間かまだ知らない

「これでもう属性検査は安心だね」


 神殿も力を失わずに済む……って違うよね。

 偽の神聖物を作っていた罰を受けないと。

 ちょうどその事で、今日四大国の王様達が集まるから今までの経緯を全部話して赦してもらわないと。

 まあ、赦す代わりに神殿が四大国の犬になるのは目に見えているけどね。

 命を奪われるよりはいいはずだよ。


 それにしても、先生も神官達も精霊に夢中になっているね。

 すごく嬉しそうだ。

 

(じゃあね? わたし達はいつでもあなたと一緒にいるからね)

(クスクスッ。姿は見えなくてもいつも一緒だよ?)

(クッキーおいしかったよ? 次はケーキが食べたいな)


「ずっとわたしと共に!? はいっ! 嬉しいですっ! これからは今まで以上に精進しますっ!」


 先生……

 今以上に精進するって、踊りをさらに激しいものにするっていう事かな?

 これは、若い神官達は大変な事になりそうだね。


「さて、じゃあ精霊達も大丈夫そうだから、わたしはアカデミーに戻るよ。でも、夕方に四大国の王様達が集まるからその時にこれからの神殿の事を話し合おう?」


「夕方……ですか……はい。覚悟はできております。今までの神殿の不正を全て話して、もう二度と偽の神聖物を作らない事を誓います」


 司教は罪を償う覚悟ができたんだね。

 四大国の王の前でさっきみたいに『全ては神殿の為に』なんて開き直ったらすぐに処刑されかねないからね。

 とりあえず、ひと安心だよ。


「うん。それがいいね。神聖物のお披露目は……先生が救世主になるまでの物語を絵本にしたらどうかな? それを今回の巡礼で世界中の子供達に読み聞かせするの。ダメかな?」


「それは素晴らしい考えです。神官の絵の得意な者にさっそく作らせましょう。そして、大量生産した売り上げ金で神殿はウハウハです」


 司教は、なかなかの商売人だね。 

 

「司教? 寄付金が無くなったら神殿はかなり厳しいのかな?」


「そうですね。今までは寄付金で成り立っていましたが……これからはどうしたものか」


「その事なんだけど、属性検査は今まで無料でしていたの?」


「え? はい。世界中を巡礼するついでにしていましたので……」


 なるほど。

 偽の神聖物でかなりの寄付金がもらえたから属性検査を有料にする考えが無かったのか。


「じゃあ、こうしたらどうかな? 四大国の王様以外の人間には偽の神聖物の事を伝えないでしょ? だから、『司教しか神力を持っていないからもう神聖物は作れない。でも、神殿を継続する為に属性検査をする事への寄付をお願いしたい』って言ってみたらどうかな?」


「ですが……納得するでしょうか? 今まで無料だった検査を有料にする事への反発は……」


「精霊に愛されている先生の存在が世界中の人間に知れ渡れば問題ないよ? その辺りは四大国の王様達にも協力してもらおう?」


「そこまで……四大国の王達が協力してくださるとは思えません。今までずっと騙してきたのですから」


「え? あぁ……あのさ、四大国の王様達は神聖物が偽物だって気づいていたみたいだよ? 他国から『大国なのに寄付をしなかった』って言われるのが嫌で仕方なく偽の神聖物を受け取っていたみたい」


「ええ!? そんな……気づかなかったです。全くそんなそぶりは……」


「大国の王様達だからね。表情ひとつ変えずにやり取りしていたんでしょ?」


「……やはり処刑されるのでは?」


「ふふ。そんな事にはならないよ? 神殿が四大国の犬になればね」


 あ……

 言っちゃった。


「ええ!? 神殿が四大国の犬に!?」


 司教が腰を抜かして座り込んだね。

 

「今まで散々悪さしてきたんだからもうそれしか生き残る道は無いんだよ? それに、属性検査が信頼できる結果を出せばいくら四大国だって神殿に手出しはできないはずだよ? 少しずつ四大国の王様達からの信頼を取り戻して以前の神殿を取り戻そう?」


「聖女様……わたしが愚かなばかりに、これからの神殿を支える者達に苦労をかける事になってしまいました。わたしの命の続く限り罪を償い神殿の威厳を取り戻せるように励みます」


 良かった。

 犬になる事を覚悟したんだね。

 でも四大国の王様達は皆個性が強いというか、我が強いというか……

 今までは王様としての優しい皮を被った姿しか見ていないだろうからね。

 司教はこれから苦労するだろうな。

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