精霊に好かれる人間は(わたしと違って)心が清らかなんだね
(ぺるみ? どうした?)
突然考えないようにしたから上位精霊に心配させちゃったね。
うん。
大丈夫だよ?
……その魔族は、優しい魔族だったの?
(あぁ……常に正しく、常に優しかった。だが、いつも寂しそうに笑っていたな)
いつも寂しそうに……
「……い……おい! おい! ぺるみ! 精霊がオレのキャンディーを食べようとするんだ。オレが舐めたキャンディーなんか食べさせられないだろ? 早く『先生』って奴からお菓子を渡させてくれよ」
え?
ああ、ベリアルも天族だから精霊が見えているんだね。
ぐふふ。
わたしならベリアルが舐めてベトベトになっているキャンディを喜んで舐めるけどね。
ぐふ……ぐふふ。
(ぺるみ……気持ち悪いわよ?)
(他人が舐めたキャンディーを舐めるなんて絶対に嫌だな)
(やはり天族は皆、変だな)
う……
上位精霊達にドン引きされている……
だって、だって、ベリアルはかわいいんだもん。
世界一かわいいんだもん。
今も下位精霊達にキャンディーを舐めさせないように慌てているし。
くぅぅ!
かわいいっ!
「聖女様、お菓子の準備が整いました」
司教が豪華な銀のお皿にたくさんのクッキーを用意してくれている。
すごい……
山盛りのクッキーだ。
ピラミッドみたいになっているよ。
神官は器用なんだね。
上から順番に取らないと崩れちゃいそうだよ。
精霊は下から取らないよね?
「うわあぁ! 旨そうだなぁ……」
ベリアルも食べたそうだね。
くぅぅ!
かわいいっ!
「じゃあ、先生、神様を敬う踊りをお願い。それから、下位精霊達は先生に少しだけでいいから姿を見せてくれるかな?」
(クスクスッ。いいよ?)
(クッキー早く食べたいよ)
先生は、初めて見る精霊の姿に驚くだろうね。
すごくかわいくて小さくて、もうメロメロになっちゃうだろうね。
「では……友から教わった精霊様を敬う踊りを始めますっ!」
おぉ……
見ている方が恥ずかしくなる踊りだね。
司教は瞳を輝かせて見ているけど、若い神官達は複雑な表情だね。
先生には、この踊りの後継者の育成をする役目もあるからね。
後継者っていう事は若い神官だから……
皆、こんな踊りは恥ずかしいよね。
いくら救世主様の後継者でも、この踊りだけは……無理だよ。
(クスクスッ。『リコリスアカデミーの精霊愛重め人間』の為に少しだけ姿を見せてあげよう?)
(うん。わたし『リコリスアカデミーの精霊愛重め人間』が好きだよ?)
(わたしも!)
先生が聞いたら泣いて喜びそうだね。
下位精霊達が先生の目の前に飛んで行くと姿を現す。
「え? あ……ええっ!?」
先生は初めて見る精霊に腰を抜かしたね。
司教と神官達も精霊を見つめたまま動けなくなっているよ。
(クスクスッ。いつも楽しい踊りをありがとう)
(巡礼の無い時はいつもずっと一緒にいたんだよ?)
(これからは毎日一緒にいられるね)
おぉ……
精霊達は先生の前では『リコリスアカデミーの精霊愛重め人間』とは呼ばないんだね。
「頭の中に……声が聞こえてくる……? わたしと共にいられて嬉しいと……?」
先生が嬉し過ぎて震えているね。
(クスクスッ。一緒にクッキーを食べよう?)
(さっきの踊りをもう一回見せて?)
(皆で遊ぼ?)
すごいね。
先生は精霊達から本当に好かれているんだ。
これなら属性検査も安心だね。