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引っ込み思案な人ほど周りをよく見ているよね

 上位精霊達を呼び出したのは先生の踊りを見てもらう為じゃなかったけど、精霊達も先生も楽しそうだからもう少しこの踊りを続けてもらおうかな……

 でも先生の体力は限界みたいだね。


「はぁはぁ……これが精霊様を敬う気持ちを込めた踊りです! 毎日朝晩踊っていますっ!」


 先生……

 上位精霊達がお腹を抱えて笑っているよ。

 確かにおもしろい踊りだからね。

 

「そうなんだね……」


 笑われているなんて言えないよ。 


「上位精霊様はどのような反応ですかっ?」


「え? えっと……うん。喜んでいるよ?」


「おぉ! 友の言った通りだっ! 指の先から腰の落とし方まできちんと教えてもらっておいて良かったっ!」


 先生は本当に精霊を大切に思っているんだね。


「先生はいつから精霊が好きになったの?」


「幼い頃、神官様が巡礼に来るたびに子供達に色々な物語を読んでくださいました。そのお話の中に精霊様が神様の使いでこの世界を守っているという物がありました。その物語の挿し絵の美しい精霊様に心を奪われたわたしは、神官様に頼み込みその本を譲り受けました。今でも、その本はわたしの宝物です」


「そうだったんだね。神官が巡礼に来なければ今の先生はいなかったんだね」


「はいっ! 今までのペリドット様と司教様のお話を伺って……あの頃からもう神殿で神力を持つ神官様は司教様だけだったのですね。ですが……わたしの神殿に対する想いは何も変わりません。司教様……大丈夫です。わたしは絶対に神聖物の事は口外しません」


「先生……そうだね。神力が無くても神殿が皆を支えて笑顔にしてくれた事実は変わらないよ」


「聖女様……」


 司教が悲しそうな顔をしているね。


「司教だけが悪かったんじゃないよ? 神殿も必死だったんだよね? だからこそちゃんと謝って赦してもらおう?」


「今からでも……間に合うでしょうか?」


「もちろんだよ! これからもたくさんの人間達に笑顔になってもらおうよ!」


「……はい。聖女様……」


「さて、じゃあ……精霊の皆、この水晶に神力を入れたいの。どうしたら水晶を壊さずに入れられるかな?」


 やり直そうと頑張っている司教の為にも上手くやらないと。


(なるほど。この水晶に神力を入れたいのか)

(でもぺるみは神の娘なのだぞ? その神力に耐えられるか?)

(ほんの少し入れてみるとか?)

(それでも壊れる可能性が高いわね)

(うーん。この水晶ではぺるみの神力には耐えられないだろう)

(もしこの水晶に神の娘の神力があると分かれば天族でさえ欲する物となるだろう)


「う……それは困るよ。でも、神力は入れないと」


(……ぺるみの神力が無くても下位精霊は検査をする)


 え?

 今のって闇の精霊のシェイド?

 離れた場所で体育座りをしていたけど話は聞いてくれていたんだね。


「それってどういう事?」


(下級精霊はお菓子が好きだ。それと、その『リコリスアカデミーの精霊愛重め人間』も好かれている。つまり検査のたびに『リコリスアカデミーの精霊愛重め人間』がお菓子と踊りを捧げれば下位精霊は素直に言う事を聞くだろう)


「え? それって……」


 先生が亡くなったらもう属性検査ができなくなりそうだね。

 それじゃあ問題解決にならないんじゃ?


(ぺるみの考えは分かる。『リコリスアカデミーの精霊愛重め人間』が後継者を育てれば良いのだ)


「後継者を?」


(そうだ。属性検査は人間にとっては重要な事だ。それをできる人間が神官の中に居続ける事ができるなら神殿の威厳は保たれるだろう)


 すごい……

 シェイドは物静かで人見知りだけどすごく頭がいいんだね。


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