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嘘がばれたら素直に認めないともっと大変な事になるんだよ

「学長? 神官って治癒の力があるんじゃないの?」


「はい。そのはずですが……まさか、噂は事実なのか?」


 学長……真剣な顔をしながらも、ベリアルの赤ちゃん用のボンネットに頬擦りしているね。

 ベリアルもドン引きしているよ。


「噂って?」


「『もう神官には神力が無い』という噂です」


 神官に神力が無い?

 だから、偽の神聖物を本物にみせかけて寄付をさせたり、嘘ばかりの属性検査をしていたの?

 吉田のおじいちゃんも、今いる神力を持つ人間が亡くなったらもう神力を持つ人間はいなくなるって言っていたよね?

 もしかしたら、もう神力を持つ人間はいないのかもしれないっていう事?

 ……これが事実だとしたら神殿はなくなるの?

 信仰心の強いこの世界の人間達はどうなるんだろう?


「それって、神殿が存続できなくなるっていう事?」


「その可能性が高いかと……」


「それは困るね。なんとかならないかな?」


「これは、わたしのような学長ではなく、国王様方が話し合うような事例ですので……」


「……そうか。神官が偽の神聖物を認めないのは、神殿を存続させる為なんだね。偽物だって認めたら神力が無い事がばれちゃうから」


「え? 偽の神聖物!? そんな事までしていたとは……」


「でも……かわいそうだけど、属性検査が間違っているってこの場で明らかにするのは、やめないよ? この検査のせいで人生を狂わされている人間が大勢いるんだから。それに、どちらにしろ、これ以上嘘はつき続けられないよ。一日でも早くこんな茶番はやめないと、自分で自分の首を絞め続ける事になるよ」


「ペリドット様……はい。神様に仕える神官が嘘にまみれて生き続ける事は許されません。やりましょう」


「うん。そろそろ神官の目も見えるようになってきただろうし、始めるね」


 このままズルズル嘘をつき続けるよりは……

 今を逃したらまた嘘をつき続けないといけなくなるんだ。

 ごめんね。

 どんな思いで嘘をついてきたかは想像できるよ?

 でも、今日でそんな辛い日々は終わりにしよう。

 次の代の神官にまでそんな嘘を引き継がせたらダメだよ。


「神官達よ……目は治りましたか? わたくしは……黄金の国ニホンの第一王女、ペリドットです。昨日、偽の神聖物にドラゴンが怒っていると知らせた者です。まだ……続けるのですか? もう終わりにしましょう。こんな嘘の上塗りをもうしてはいけません」


「……わたしは、司教です。少し……よろしいでしょうか」


 司教?

 高齢の男性だね。

 この人間からは少しだけ神力を感じる。

 でも、治癒ができるほどの神力は無いね。

 他の人間には全く神力を感じない。

 まさか、最後の一人の神力を持つ人間っていう事?

 ……?

 あれ?

 違和感があるような?


「ドラゴンと共に暮らす王女様でしたか……? 聖女様……聖女様……」


 司教がわたしの手を握りながら座り込む。

 わたしがルゥだって分かったのかな。


「わたしが……分かるの?」


「はい。穏やかでありながら激しさも感じさせる神力……聖女様ですね?」


「ルゥの時には一度も会った事は無かったよね?」


「リコリス王国でのバルコニーでの『お出まし』の際に遠目から……あの時の花火は……素晴らしかったです。温かく優しい……そう……母親の愛ような心地良さでした」


「……どうして、神力の無い人間が神官になっているの? 神殿を存続させる為なの?」


「世界中の人々が神様を敬っています。我ら神殿が消滅するわけにはいかないのです」


 ……だからって、ついていい嘘ではないよ?

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