やる事が多過ぎて今日は眠れないだろうなと思う
「あのね? 奴隷なんて絶対にダメだよ? 人は産まれながらに平等なの。だから、奴隷なんてわたしの国にはいないんだよ?」
この世界では通じないかな?
貴族が奴隷を買う事もあるらしいし。
「黄金の国には奴隷がいないんですか? わたしの国と同じです!」
へぇ。
そういう国もあるんだね。
「そうなんだね。優しい王様なのかな? さっきも言っていたよね?」
「前の王様も、その前の王様も皆優しかったって聞きました。自慢の王様なんです!」
「だから隣国が、そんないじわるをするのかな?」
「……そうかもしれません」
「なるほど。その事をリコリス王に話してみない?」
お兄様なら、きっと話を聞いてくれるはずだよ?
四大国は小国の揉め事を解決する権限があるんだよね?
「いくら、名君のリコリス王でも小国同士の揉め事なんて……それに、もし隣国の王様が『平民が勝手に川を塞き止めた』って言い出したら……」
本当にこの子は……
優し過ぎて、深く考えちゃうから行動が慎重になるんだね。
「……あなたの国の特産は何かな?」
「え? 特産……ですか?」
「うん。なんでもいいの。小さい物でも、皆が知らない物でも」
「……えっと、作物は魔素のせいでほとんど育たなくて。魔素が無くなった今は水が無くて……でも、職人が宝石の加工をして輸出しています。と言っても、デザインが古いって大国の貴族にバカにされて……最近はほとんど売れなくて」
「なるほど……ふーん。職人……ねぇ」
ベリス王に頼んで最新のデザインを教えてあげればいいんじゃないかな?
でも、それだとベリス王に儲けがないかな?
うーん。
「あの……王女様? やっぱり古いデザインじゃダメ……ですか?」
「そんな事は無いよ? 流行は繰り返すって言うし。その加工前の宝石はどこで手に入れているのかな?」
「はい。先々代の王様の他国の友人が、大国に卸せない小さい物を破格の値段で売ってくれるんです。王様が亡くなった後にもずっと……」
「破格の値段で?」
「はい。昔世話になったお礼にって言って」
「……あなたの国の王様は代々本当に立派なんだね。亡くなった後にもそこまでしてもらえるなんて」
「わたしはあの国に生まれた事を誇りに思っています」
まっすぐな瞳だね。
協力したくなっちゃうよ。
「もし……もしもだよ? 宝石の販売に協力してくれる人がいたとしたらあなたの国の王様は嫌がるかな?」
「え? それは……」
「あなたは大国に話さずに自分達で解決したいんだよね?」
「はい。隣国の平民の為にもそうしたいです」
「……わたしに考えがあるの。今日……は時間が無いから……でも、あなたの国は今大変なんだよね……うーん。あなたの国の名はなんていうのかな? 夜にでも王様に会いに行ってみるよ」
「え? 夜……ですか? でも、遠いから……」
「ふふ。大丈夫だよ? わたしには神様から与えられた超絶かわいいヒヨコちゃんがいるからね」
学長に抱っこされているベリアルを見ると、つぶらな瞳がウルウルしている。
「うん! 任せとけ! オレがお前の国までぺるみを連れて行ってやるからな! 今の話を聞いたら助けてやりたくなったぞ! いい人間だからな。そうだ。お前達、国に帰れていないんじゃないか? 一緒に行ってみるか?」
ふふ。
ベリアルのこういう優しいところ……好きだな。
さて、今日はやる事がいっぱいだね。
今から、神官に会いに行って、アカデミーが終わったら公爵の所に行くんだよね。
ベリアルは公爵のお菓子を食べたがっているし……
その後に市場に行って、夜にはこの子の国に行くのか。
忙しくなりそうだね。