『優しい王様が待つ国』の為に頑張る姿を見たら応援しないわけにはいかないよね
「水神様って水の神様っていう事かな?」
精霊とは違う存在?
海の神様なら今わたしの身体の中にいるけど。
「わたし達は微量の魔力を持っていた為にアカデミーに入学する事ができました。リコリス王国から遥か離れた小国の平民です。黄金の国……? の王女様に話しかけるなんて許される事じゃないけど……でも、いつか水神様に近い人に出会えるんじゃないかって思って。お兄ちゃんと二人でアカデミーで頑張っていたんです」
この女の子……
切実さが伝わってくるね。
平民か。
お兄様が王様になってからアカデミーに平民も入学できるようになったんだよね。
でも、最近まで貴族の為の学校だったから苦労しているんだろうな。
「水神様に何をお願いしたいのかな? わたしの国では水神様っていう名を聞いた事が無いの」
「あの……雨を降らせて欲しいんです!」
「雨を?」
「はい。聖女様が魔素を祓ってくれて過ごしやすくなって……でも、薄暗かったわたし達の国に光が差し込むようになったら、水が足りない事に気づいたんです」
「水が足りない?」
「はい。隣国もわたし達の国と同じように魔素が祓われて明るくなって、そしたら……大きい川を塞き止められてしまって」
「え? どういう事?」
「その国が……水が欲しければお金を払えって言い出して。今までわたし達の国に流れていた川の流れを変えてしまったんです」
「……そんな。でも、川の流れを簡単に変える事ができるの?」
前の世界みたいに重機があるわけでもないし、人間の力だけでそれをしたの?
「かなりの数の平民が怪我をしたり命を落としました」
「王様がやらせているの? そんな危険な事を?」
「……わたし達の国の王様はすごく優しくて……だから、隣国の平民の皆がかわいそうで……」
あぁ……
泣いているね。
この子の話に嘘は無さそうだ。
でも、なんで水神様なんだろう?
「水神様って……もしかして国の守り神みたいな存在なのかな?」
「バカらしいと笑われてしまいそうだけど、大昔に国の危機を水神様に助けられたっていう言い伝えがあるんです」
「水神様ってもしかして……ドラゴンの姿をしていたの? だからドラゴンが来ても逃げなかったのかな?」
「……実際目の前にドラゴンが来たら怖くて逃げようと……でも怖いけど、国の皆を助けたくて……アカデミーに入る為に、なけなしのお金を出してくれた王様の為にも」
なんて、いい子なの?
あれ?
でも、アカデミーに入学する平民は学費も寮での生活費も無料だって聞いたけど。
「あの……平民はアカデミーの費用は無料って聞いていたんだけど、実際お金が必要なのかな?」
「いえ。リコリスの王様は噂通りの名君です。アカデミー内の全ては無料です。でも、リコリス王国に来るまでの船賃とか……そういうのは魔素で貧しかったわたし達の国からすれば大金で」
「……皆の期待を背負っているんだね」
まだ十五歳くらいだよね?
国の未来を背負わされているのがこんな子供だなんて。
「わたし達は水神様と話ができる人を捜していたんです。もしかしたら、王女様なら……お願いです! わたし達の国を助けてください!」
確かに、水を降らせるのは簡単だけど……
水の魔法石をあげてもいいし。
でも隣国が黙っているかな?
それが原因で戦になったりしたら?
「……お願いを聞いてあげたい気持ちはあるの。でもね? それじゃあ、解決しないと思うんだ」
「え? あの……お金だったら……わたし達が働いて絶対に払います! だから……」
「違うよ? お金は、いらないの。ほら、わたしは黄金の国の王女だからお金とかをもらっても困るというか……」
魔族も天族もお金なんて使わないからね。
「あの……じゃあ……奴隷になります! なんでもやります! だから……」
あぁ……
奴隷になるなんて絶対にダメだよ?
こんな子供がそこまで追い込まれているなんて……