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商人はお客様の事をカモと呼んでいる事に気づかれてはいけません

「殿下? 大丈夫ですか?」


 ぼーっとしているように見えていたんだね。

 魔術科の先生が心配してくれているね。


「学長と先生に大切な話があるの。これは赦されない事だよ」


 偽の神聖物だけじゃなかったんだ。

 まさか神官が嘘つき集団だったなんて……

 でも信じてくれるかな?


「はい。殿下、なんでしょうか?」


 おお……

 学長はヒヨコちゃんの姿のベリアルに鼻の下を伸ばしているね。

 ニヤニヤが止まらない気持ちは、よーく分かるよ?


「信じられないと思うけど……神官が行う属性検査は、まともなものとは言えないの」


「殿下……そのような……神殿を敵に回すような発言は危険です」


「学長は属性検査を受けた?」


「いえ、わたしには魔力がありませんので。殿下は、受けた事が?」


「無いよ? でも……今、水の精霊が教えてくれたの」


「水の精霊? 水の精霊っ!? 水の精霊ぃい!?」


 先生……三回言ったね。


「うん。今ここに来ているの」


「今!? 今っ!? ここ……ここ……こここここ!」


 先生……

 こんなに純粋だと心配になるね。

 悪い人間から見たら簡単に騙せるから、いいカモに……

 まさか……


「先生は前にも変わった物を売りつけられたりした事があったりするの?」


「え? 変わった物? はいっ! わたしの事を『いいカモ』と呼ぶ商人がたくさん来ますが、わたしは鳥ではありませんっ!」


 この世界でも『カモ』って言うのか。

 何を買わされたのか気にはなるけど今は忙しいからね。

 後で、詐欺に遭っているってよく教えてあげないと。

 でも、先生のこの性格だと魔術がらみで誰かを疑うなんて無理だろうな。

 詐欺師側とも話をした方が良さそうだね。

 ベリス王に訊けば誰だか分かるかな?

 今まで騙されて支払ったお金も返してもらわないとね。


「先生、カモっていうのは鳥じゃないんだよ? 後でゆっくり教えてあげるからね? とりあえず、わたしは神官が偽の属性検査をしている事を認めさせないといけないの。でも、組織的にやっている事だろうから、わたしの検査をさせて、そこで言われた属性以外の力を使って皆の前で神官の検査が信用できない事を証明しようと思うの」


 神聖物の事は大金が絡んでいるから公爵と色々相談してから決めたけど、支払っているのは民個人じゃないからね。

 まあ、もちろん税金だったりはするだろうけど、毎年の事だから予算は組んであるはずだよ?

 でも、この属性検査は魔力を持つ人間の人生が関わっているからね。

 先生みたいに騙されて違う属性を言われたら人生を狂わされる事もあるかもしれない。

 そんなのは絶対にダメだよ。


「本当に……神官がそんな事を……だが殿下が嘘をつくはずがない。殿下はあのお方なのだ……よし! 殿下のお言葉を信じます!」


 学長はわたしが先々代のリコリス王の孫だって知っているから信じてくれているんだよね?

 先生はその事を知らないから信じてもらえないかな?

 でも、先生はいつも簡単に詐欺師に騙されているから……


(ポセイドン? お願いがあるの。ポセイドンの事を『ネーレウスのおじいちゃん』として話してもいいかな?)


(精霊の名は人間も知っているからな。構わないぞ? 今わたしがここにいる証拠として水で何か創ってやろう)


(水で何かを?)


 ルゥが幼い頃に創ってもらったかわいい犬とかかな?

 あれはかわいかったよね。

 学長はかわいい物が好きみたいだしちょうどいいね。


「学長と先生には話すけど、水の精霊ネーレウスって知っているかな?」


「ネーレウス様!? あの上位精霊様のですか!?」


 さすが魔術科の先生だね。


「魔術に疎いわたしでも、聞いた事のある名です」


 学長も知っているんだね。

 上位精霊ってすごいんだな。


「ネーレウスが属性検査の事を教えてくれたの。神官が嘘をついている事に怒っているみたい」

 

「ネーレウス様が!? 大変だ」


 ……学長の事も心配になってきたね。

 いくら知り合いの孫でもここまで簡単に信じて大丈夫なのかな?

 人間には狡猾な印象があったけど、やっぱり個人差があるんだね。


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