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『悪どい元聖女』と『かわいい元堕天使』

「おい。来たぞ」


 ベリアルがつぶらな瞳で空を見上げている。

 くぅぅ!

 かわいいね!

 

「うん。あれ?」


 ドラゴン王のばあばとブラックドラゴンのおじいちゃんもいるね。

 群馬から帰ってきたんだね。

 おもしろそうだから付いてきたのかな?

 あと二分もすればアカデミーに着くね。


「なんだ? 鳥の大群か?」

「鳥にしては大き過ぎるだろう」

「え? 待って? あれって……ドラゴン……?」


 ふふふ。

 これでわたしが大嘘つきの痛い奴じゃない事が証明されたね。

 皆の視線が痛かったから早めに来てもらえて良かったよ。

 さてと、外に出ないと。

 身体の大きいドラゴン達が建物を壊したら大変だからね。


「先生、ドラゴン達が時間を間違えてわたくしを迎えに来たようです。外で話してきます」


 一応許可を……ってダメだ。

 あまりの恐怖で動けなくなっているね。

 ここは三階か……

 まぁ、これくらいなら飛び降りても平気だね。

 階段を使ってのんびり外に出ていたらドラゴン達がアカデミーの建物を壊しかねないからね。

 身体が大きいからその気が無くても建物を壊しちゃうんだ。

 外で待っていないと。

 スカートの下にアラビアンパンツを履いてきて良かった。


 教室の窓を開けるとそこから飛び降りる。


「ええ!? 殿下!」


 先生の驚く声が聞こえてきたね。

 窓の方を見ると先生とクラスメイト達が驚いた顔で落ちていくわたしを見つめている。


「よし。下が土で良かったよ」


 思ったよりは低かったね。


「お前……やってる事が犯罪者みたいだぞ?」


 抱っこされているベリアルが軽蔑のつぶらな瞳でわたしを見つめている。


「え? 何が?」

 

「ベリス王に詐欺みたいな契約書の作り方を訊いてたのはこの為か?」


「えへへ。まさかあの子が誘拐犯の孫だったとはね。この契約書はお兄様にあげるんだ」


「ヘリオスに? なんでだ?」


「今、ドラゴンが現れたでしょ? この契約書にはドラゴンがアカデミーに来たら領地をわたしにくれるって書いてあるの。『領地が無い公爵家』は没落しているっていう事なんだよ? あの子の領地は、わたしがこの契約書をお兄様にあげた時点で国の所有物になるの。だから『自分は令嬢を拐ってもいないし闇魔法も知らない』って言い逃れしたとしても、もう住み続けられる領地が無いっていう事なの」


「あの生意気な孫は何も考えずにサインしたのか。かなり甘やかされて育ったんだろうな。何も分かっていないみたいだ」


「まぁ、あの子の家族が処刑される事は既に決まっているだろうけどね。いきなり、あの子も知らないような遠縁の親戚が現れて『皆死んだなら自分が次期領主に』なんて意味の分からない事を言い出さない為の契約書って言う方が正しいかもね。次の領主が決まるまでお兄様が管理してくれれば民も幸せだろうから」


「うわあ……お前、あの一瞬でそんな恐ろしい作戦を考えたのか。怖っ。ん? でも公爵自らサインしたんじゃないのにあの生意気な孫のサインで効力があるのか?」


「ふふ。その辺りはお兄様が考えてくれるはずだよ? リコリス王国の法を駆使してね」


「法を駆使?」


「法にはね? いろんな抜け道があるんだよ。完璧に見えて実はいろんな穴があるの」


「穴?」


「ふふ。その辺りはお兄様に任せよう?」


「じゃあ、なんでぺるみは『ドラゴンが来なかったら黄金を全部譲る』なんて契約書を書いたんだ?」


「一方的な押し付けの契約じゃないって見せる為だよ? 無理矢理あの子の領地を奪い取ったわけじゃないって思わせる為かな? わたしも損をしていたかもってね」


「お前……天界にいた頃のペルセポネ様とは大違いだな」


「ん? ふふふ。だいぶ強くなったよ」


「だいぶどころじゃないだろ……怖っ」


 あぁ……

 わたしを見つめて怯えるヒヨコちゃんもかわいいよ。

 ぐふふ。

 今日はかわいいヒヨコちゃんをずっと抱っこできて幸せだよ。

 

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