契約書はきちんと内容を確認してから署名しましょう
さて、ドラゴンが到着する前に……
「では、もしドラゴンがリコリス王国に現れたら……貴女はどのような罰を受けるのでしょうか? 他国とはいえ、王族を侮辱したのですから処刑は免れませんね」
「はぁ!? いいわよ! 処刑でもなんでもすればいいわ?」
おぉ……
処刑って言われても怯えないほどの能天気なんだね。
よほど大切に甘やかされて育ってきたんだね。
「ご家族にもこのような娘に育てた罪がありますね。その辺りはいかがなさいますか?」
「……じゃあ、領地をあげるわよ! ドラゴンが来るはずないんだから、なんでもあげるわ? クスクス」
「あぁ……そうですか。なんでも……では早速今から書類を作成しますので……」
ふふふ。
こんな事もあろうかとベリス王に書類の作り方を習っておいたんだ。
一見まともに見えるけどかなりこちらに有利になる契約書……
ベリス王は、こうして人間から領地を奪い取って悪どい商売をしているんだね。
慌てて書いたけど不備は無さそうだね。
さてと……
「では、こちらにサインを……(急ぎめにね)先生はわたくしが無理矢理サインをさせていない姿をよーく目に焼きつけておいてください」
後になって無理矢理サインをさせられたなんて言わせない為にね。
「殿下……そんな……(わたくしのボーナスは)大丈夫ですか?」
この先生……
かなり分かりやすいね。
でも、嫌いじゃないよ。
むしろ裏表が無くて好きかも。
「サインを終えたようですね。では、ドラゴンが来なかった時にはわたくしの国、黄金の国ニホンの国中の黄金を全て差し上げましょう。貴女ばかりが差し出すのでは不公平ですから」
「黄金を? 本当に黄金があるの? それも嘘なんじゃないの?」
「わたくしは今朝、黄金の馬車で登校しましたが……ニホンでは平民の子供も金塊のつみきで遊ぶほど金が溢れています。さぁ、こちらの書類を作成しました。確認してください」
「あの金の馬車の噂は本当だったのね……でもドラゴンが来るはず無いから。クスクス。おじい様が喜ぶわ」
笑っていられるのも今のうちだね。
ドラゴンの大群がリコリス王国に向かってきているからね。
驚き過ぎておもらししないでね?
そうだ、少し脅しておこうかな?
「ちなみに……ドラゴンはわたくしの家族ですので、わたくしを侮辱した貴女を食べるかもしれませんが……か弱いわたくしにはそれを見ている事しかできず、心苦しい限りです」
「……いつまで嘘をつき続けるの? 面倒な女ね。所詮は小国でしょう? この大国リコリスの公女のわたしより上だとでも勘違いしているの?」
へぇ。
じゃあ、この子が誘拐の実行犯の孫か。
性格が悪いのは血筋かな?
「……勘違いしているのは貴女ですよ? 今の言葉……忘れないでくださいね? 先生もよく覚えておいてください」
「はい! 絶対に忘れません!」
先生……
ボーナスで何か買う予定なのかな?
すごくご機嫌だね。
なんだかかわいく見えてきたよ。