偽物を売りつけるような詐欺師でも、人間にとっては尊い神官なんだよね
「ふふ。うん。ありがとう。でも大丈夫だよ? わたしは赤ちゃんの頃からドラゴンと一緒に育ったの。だから……」
これは本当だからスラスラ話せるね。
「え? ドラゴン?」
「あのドラゴンか?」
「ニホンのドラゴンはリコリス王国のドラゴンとは違うんじゃないか?」
まぁ、そうだよね。
肉食のドラゴンと一緒に暮らすなんて考えられないよね。
「ふふ。同じドラゴンだよ? 大きくて強くて優しいの」
「え? ドラゴンが優しい?」
「怖いよな? ドラゴンって聞いただけで震えるくらいだ」
「姉ちゃんはドラゴンの友達なの?」
「うーん。友達っていうよりは家族かな?」
「ドラゴンと家族!? かっこいい!」
「本当に……? でも嘘をついているようには……」
「そういえば、前にドラゴンが聖女様を迎えに来たって聞いたぞ?」
「え? 聖女様と姫様は違うだろ?」
昨日市場にいなかった人間はわたしが聖女のルゥだったって知らないからね。
そういえば、神官は神聖物が偽物だって認めたのかな?
認めないなら今日の神聖物のお披露目でドラゴンに来てもらわないといけないんだけど。
第三地区に遊びに来ていたレッドドラゴンが、おもしろそうだから来てもいいって言ってくれたんだけど。
「(公爵、神官は神聖物の事で何か言っていた?)」
皆に聞こえないように少し小さい声で話そうかな。
「あぁ……偽物だとは認めませんでした。それどころか、ペリドット様を嘘つき呼ばわりしまして。ドラゴンが来るとは思っていない様子でした」
「ふぅん。お兄……王様は? 何か言っていたかな?」
「薄々……というよりはもうペリドット様の正体にお気づきのようでした。陛下の御前で『ドラゴンと暮らす少女』を悪く言った事に腹を立てられまして、本日神聖物のお披露目を民の前で行う運びとなりました」
「なるほどね。神官はわたしの優しさを無下にしたんだね。まぁこうなるだろうとは思っていたけどね」
「今、民の前で神官の不正を明らかに?」
「うーん。神官の不正は神様への不信感に繋がるからね。やめておくよ。でも……もう一度最後の機会をあげようかな?」
「最後の機会……ですか?」
「うん。お披露目は何時からかな?」
「はい。アカデミー終了後一時間程してからではどうかと陛下が」
「……なるほど。ふふ。さすが双子の兄妹だね。王様に伝えて? わたしも王様と同じ考えだよって」
「ペリドット様、わたしの考えが正しければ……本日のお迎えはドラゴンが?」
さすが、公爵だね。
お披露目の前にドラゴンの姿を見せて『神聖物が偽物だとばれて襲われたあげく、民からの反感を買う前に全て話して今までの寄付金を返さなければ』って思わせないとね。
でも、今までの寄付金はもう使っているだろうから返せないかな。
二度と偽物の神聖物で寄付金を手に入れるなんて事をさせないようにしないとね。
民には神官がそんな詐欺行為をしていたなんて知らせたくないし、できるなら四大国の王と神殿だけの秘密にしたいんだ。
そうした方が、『他の国や民にばらすぞ』って言って神殿に圧力をかけやすくなるからね。
今まで皆を騙してきた分、今度は皆の為に働いてもらわないと。