親しみやすい王族がいてもいいよね?
「姉ちゃんはこれからアカデミーに通うの?」
昨日の男の子が話しかけてくる。
「おい! 王族相手に話しかけたら処刑されても文句言えないぞ?」
昨日いなかった人間か。
かなり慌てているね。
普段から貴族に酷い目に遭わされているからかな?
「大丈夫だよ? わたし達は昨日友達になったの。ね?」
「うん! 姉ちゃんって呼んでいいって言ってくれたんだ」
「ふふ。わたしも弟が増えたみたいで嬉しいよ」
「姉ちゃんには弟がいるの?」
「そうだよ? すごくかわいいの」
「姉ちゃんみたいに綺麗な弟なの?」
「わたしが綺麗? ふふ。ありがとう。わたしの世界一かわいい弟とは母親が違うの。でも弟の母親の事も本当の母親みたいに大切に思っているよ? わたし達家族は皆仲がいいの。王妃とか側室とかそういう確執も無いし」
っていう設定なんだよね。
揉めに揉めて結局パパが『黄金の国ニホン』の王様っていう事になったんだ。
皆、王様になりたがって大変だったんだよね。
「へぇぇ! すごいね! 側室も王妃様も仲良しなんて聞いた事ないや!」
「うん。皆で助け合いながら暮らしているからね。毎日すごく楽しいんだよ?」
「いつか姉ちゃんの弟と遊べるかな?」
「ふふ。ありがとう。弟はまだ赤ちゃんなの。遊んでくれたら嬉しいな」
「赤ちゃん!? うわあぁ! 楽しみだなあ!」
本当にこの子はかわいいね。
子供らしい子供の姿は見ていて安心するよ。
少し前まではこんな子供まで虐げられていたなんて、ルゥの父親は酷い人間だったのかな?
結局一度も会えなかったね。
「あの……殿下は……」
殿下?
わたしの事?
昨日いなかった人間か。
「姉ちゃんは姫様って呼んで欲しいんだよ? ね? 姉ちゃん」
ふふ。
本当にかわいいね。
「そうだね。殿下はちょっと恥ずかしいの。ニホンでは姫様って呼ばれていたから」
「じゃあ……姫様はどうしてリコリス王国に来たんですか?」
昨日いなかった人間は知らないのか。
市場の人間達はすごく口が固いんだね。
登校時間よりもかなり早く来たけどアカデミーの学生の姿も見えるね。
今は貴族も見ているかもしれないし、お兄様の妹のルゥだった事は話せないから……
「アカデミーに通いたかったの。魔素が祓われて自由に国を出入りできるようになってね。今までは魔素のせいで国から出る事が無かったけど、これからは外の世界に触れたいと思ったの」
あまり嘘をつきたくないからね。
これくらいにしておこうかな。
「そうでしたか。魔素に……大変でしたね」
「うん。でも、正直リコリス王国に来るのは不安の方が大きかったの。あまりにも環境が違い過ぎてね。でも、昨日市場でたくさんお話ししたらすごく楽しくて。食べ物もすごくすごくおいしくて、不安が吹き飛んじゃったの」
「姫様……オレは姫様の事をよく知らないけど、心配だよ。すごく優しいから、この国の貴族にいじめられるんじゃないかって……」
「そうだな。最近じゃ住みやすくなったけど貴族は怖いしな……」
「姫様、貴族には気をつけてください……心配です」
わたしが王族らしくないからアカデミーに馴染めるか心配してくれるんだね。
本当に皆優しいね。