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嘘を本当に見せかける為に雪を降らせてみよう

「じゃあ、降りるよ?」


 ドキドキしながら馬車の扉を開けようとすると誰かが外側から扉を開ける。


 あれ?

 御者はいないんだけど……?

 誰かな?


 扉から顔を出すと……

 え?

 公爵!?

 手を差し出してエスコートしてくれようとしているみたい。

 どうしてかな?

 なるべく秘密で会おうって言っておいたんだけど。


「公爵? どうしてここにいるの?」


「おはようございます。ペリドット様が心配で……」


「わたしが心配って……わたしは公爵の方が心配だよ」


「ペリドット様、王女がエスコートも無しで馬車から降りるなどあってはなりません」


「それはそうだけど……」


「さぁ、お手をどうぞ殿下」


「うぅ……うん。あれ? 公爵の手、冷たいね。今日は少し暑いくらいだけど……大丈夫?」


「あぁ……昔からです。強い薬をずっと服用し続けた後遺症といいますか……」


「え? そうなの? そういえば昨日は膝が痛いって言っていたよね?」


「それは、年齢によるものですから……」


「でも、わたしが公爵の膝に乗っちゃったからもっと痛くなったんじゃないかな? ごめんなさい」


「大丈夫です。年をとればどこかしら痛くなるものですよ?」


 公爵のエスコートで外に出ると、大勢の平民がわたしと公爵を見つめている。

 あぁ……

 公爵を巻き込みたくなかったのに。

 でも、ここまで来たら引き返せないね。

 昨日市場にいた人間達の姿も見えるね。

 まあ、昨日『黄金の国ニホンの王女』って話したし、こんな黄金の馬車を見ればすぐにわたしだって分かるか……

 よし、練習通りにいこう。


「公爵、ごめんね。ヒヨコちゃんを抱っこしてもらってもいいかな?」


 片手だとやりにくいからね。

 公爵がいてくれて助かったよ。


「もちろんです。ヒヨコ様、昨日は申し訳ございませんでした。あれから大丈夫でしたか?」


「うん。大丈夫だ。公爵は何も悪くないぞ? それよりナッツのタルトはあるか?」


「はい。アカデミー終了までヒヨコ様に会えない事に耐えられず……タルトを持参いたしました」


「うわあぁ! じいちゃん大好きっ!」


「わたしもヒヨコ様が大好きですよ?」


 おお……

 ベリアルは早速簡単に餌付けされているね。

 まぁ、公爵は協力者だし大丈夫か。

 じゃあ始めようかな。


「わたくしは『黄金の国ニホン』の王女ペリドット。神様より授かった聖獣と共にアカデミーで勉学に励む事となりました。これは、挨拶代わりです」


 右手をかざすと、氷の精霊フラウを呼び出す。


(朝からごめんね。雪を降らせてくれるかな?)


(もちろんよ。楽しそうね。たくさん降らせてもいいの?)


(積もると大変だから少しだけお願い)


(ふふ。じゃあ、いくわよ!)


 アカデミーの前に集まった人間達の頭上に静かに雪が降り始める。


「うわあぁ! 雪だよ?」

「今日は少し暑いくらいなのに……でも綺麗だね」

「すごい! 雪の魔力を使えるのか?」


 これだけやればあっという間にリコリス王国中にわたしの存在が知れ渡るだろうね。

 多分、昨日公爵が出した手紙を見た三大国の王が密偵を送っているはず。

 アカデミーにいるドラゴンと暮らす少女について調べに来ているはずだから、今日中には三大国の王達もわたしがルゥだった事が分かるはず。

 ベリアルの存在も、わたしがいつも人間の家族にもらった髪飾りとネックレスとイヤリングをつけている事も知っているからね。

 すぐに接触してくるはずだよ。

 ルゥが亡くなる事は伝えてあったからそのまま亡くなった事にしておいても良かったんだけど、偽の聖女が何人もいるらしいからね。

 金品を要求してできもしない浄化や治癒をする振りをしているみたいだし。

 これ以上被害者が出る前にルゥが最後の聖女だから二度と聖女は現れないって人間達に知らせないと。

 でも、これ以上神力を持つ人間が産まれない事を話す必要は無いよね。

 それを話したら神殿や神官の居場所や、人間達の心の拠り所を奪う事になるから。

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